一般社団法人日本音楽著作権協会 JASRAC

MagazineJASRAC音楽文化賞

第5回JASRAC音楽文化賞受賞者を発表

「JASRAC音楽文化賞」は、売上や利用実績などの数字には表れない地道な活動を行っている個人・団体・作品等に光をあて、音楽文化の発展に寄与した功績を称え顕彰することにより、今後の活動への励みとしていただくことを願い、2014年11月に創設されました。

第5回の受賞者は次の方々に決定し、2018年11月16日、都内で行われた贈呈式にて表彰盾と副賞が贈られました


<第5回JASRAC音楽文化賞 受賞者>
戸ノ下 達也
普久原 恒勇 様、備瀬 善勝 様
認定特定非営利活動法人 鳴門「第九」を歌う会

 

 

戸ノ下 達也 様

顕彰理由

明治の唱歌教育から今日のJ-POPに至る150年の歴史の中で、大衆に根付いた音楽文化がどのように生まれ変遷していったか、また変遷した理由を、史実に基づいて客観的に検証した。空白だった近代の日本の音楽史、特に戦時体制下での音楽の役割、営みを自著・編著で克明に浮かび上がらせた。


受賞者コメント

地域や歴史に根付いた音楽に取り組まれている方々とJASRAC音楽文化賞を受賞できたことは、重い責務を感じるとともに大きな喜びとなっています。日本で音楽がどういう役割を担い、どのように歌われてきたか、今後も考察を深め、次世代にも考えてもらえるよう、語り継いでいきたいと思います。

略歴・実績

1963年、東京都生まれ。専攻は近・現代日本音楽史。著書に『「国民歌」を唱和した時代』(吉川弘文館)、『音楽を動員せよ』(青弓社)、『戦時下音楽界の再編統合』(音楽の世界社)、編著に『日本の吹奏楽史』、共編著に『戦後の音楽文化』『日本の合唱史』『総力戦と音楽文化』(いずれも青弓社)、『戦う音楽界』(金沢文圃閣)、資料復刻の編・解題として『音楽文化新聞』(金沢文圃閣)など。『ハンナ』『音楽現代』では公演レビューや論考を掲載。また、演奏会の企画・プロデュースにも注力している。

 

普久原 恒勇 様 、備瀬 善勝 様

普久原 恒勇 様
備瀬 善勝 様

顕彰理由

両氏とも沖縄市を拠点に、島唄、沖縄歌謡の名作を生むに留まらず、後継の音楽家を育てたほか、地域と密着したレコード店経営、音楽プロデュースを続け、沖縄文化に根差した多彩なジャンルの作品を全国に発信してきた。沖縄市が「音楽のまち」として栄える礎を築いた。

受賞者コメント

普久原 恒勇 様
このたびの受賞は、琉球音楽に長年こだわってきたことへのご褒美だと思っています。福と徳を一遍にいただいてしまった心持ちがします。これまで多くのアーティストのお手伝いをしてきました。関係者の皆さまに心より厚くお礼申し上げます。

備瀬 善勝 様
普久原先生がいなかったら、音楽に携わる仕事はしていなかったと思います。レコード制作やイベントのプロデュースを"音楽のまち"「コザ」(沖縄市)で手掛けてきただけのつもりだったので、このたびの受賞に驚いています。本当にありがとうございます。

略歴・実績

普久原恒勇氏は1932年生まれ。戦後の沖縄民謡のヒットメーカーと呼ばれる。名歌「芭蕉布」から、琉球古典音楽の壮大な組曲「尚円」まで、意欲的な創作活動が有名である一方、創立91年を誇るレコード会社「マルフクレコード」の音楽制作を担って、数多くの島唄、沖縄歌謡を送り出し、県内外の音楽家に影響を与えた。

備瀬善勝氏は1939年生まれ。作詞家として活動しつつ、沖縄市「キャンパスレコード」(レコード制作・レコード販売)を経営。数多くの島唄、沖縄歌謡をプロデュースし、沖縄文化に根差した幅広いジャンルの作品を送り出した。同市の音楽資料館「おんがく村」の館長も務めている。

 

認定特定非営利活動法人 鳴門「第九」を歌う会

顕彰理由

1918年、戦時下にもかかわらずアジアでベートーヴェン「第九交響曲」が初演された鳴門市で、全国の第九愛好家とともに長年、同曲を歌い継いできた。海外ゆかりの地での公演も重ね、初演を務めたドイツ兵捕虜の遺族とも交流するなど、史実として語られる100年前の奇跡的な公演の感動を、時代を越え、国境を越えて蘇らせている。

受賞者コメント

副理事長 亀井 俊明 様
我々の活動に光を当てていただきお礼を申し上げます。「第九」を通して国際交流を深めてきました。不寛容な社会、また民族や宗教間で争いの絶えない今日、音楽を通じて、誰もが多様性を認め合えることを願って、今後も活動を続ける決意です。

略歴・実績

1981年に結成、2013年に法人化された合唱団(大塚道子理事長)。鳴門市で毎年6月、全国から参加する愛好家と「第九交響曲」を歌い続けている。きっかけは第一次大戦中、同市に所在した収容所のドイツ兵捕虜たちが人権への配慮から文化活動等を認められ、1918年6月1日、アジアで初めて第九を全楽章演奏したという史実による。初演100周年を迎えた 2018年6月の演奏会では、2日間にわたって日・独・中・米4か国の合唱団員計1,200人が熱唱する記念事業が催され、ドイツ兵捕虜の遺族らも招待された。海外においても、ゆかりの地で現地の合唱団と合同演奏会を重ねている。


第5回JASRAC音楽文化賞選考委員(報道社名五十音順)

山口 進 氏(朝日新聞 文化くらし報道部 部長)
加藤 義久 氏(共同通信社編集局文化部 部長)
吉田 俊宏 氏(日本経済新聞社 編集局文化部 編集委員)
西川 龍一 氏(日本放送協会 放送総局解説委員室 解説委員)
西田 浩 氏(読売新聞東京本社 編集局文化部 編集委員)

推薦協力

一般社団法人 日本新聞協会

2018年11月16日、都内で行われた贈呈式での集合写真