著作権保護の必要性

演奏や複製、インターネット配信などの方法で、音楽や漫画、小説、絵画などの作品(著作物)を利用するときには、事前に、その作品を創作した人(著作者)等から、許諾を得る必要があります。
このように、著作者が、創作した著作物を利用しようとする人に、利用を認めたり、禁止したりできる権利を著作権と言い、著作権法に定められています。著作者は利用を認めるとき、著作物使用料を求めることもできます。

創造のサイクル

著作物は自然に生まれるものではなく、作詞者や作曲者をはじめ、それぞれの著作者たちが労力をかけて創作するものです。著作者にとって、多くの人に自分の作品を楽しんでもらうことは喜びであり、新たな作品を創作する励みにもなります。同時に、創作した著作物が利用されるときに正当な対価を得られることも、創作に携わる人たちの創作活動や暮らしを支えるためにとても大切です。また、次の世代が創作を志すインセンティブともなります。
作品への対価が次の創作を支えていく循環を「創造のサイクル」と呼んでいます。著作権は、「創造のサイクル」を循環させ、新たな文化を生み出すために欠かせないものです。
創造のサイクル 音楽を創作する人(作詞家・作曲家など)音楽を聴いてもらう喜び 新しい作品を音楽を利用する人(事業者・主催者など)へ提供。音楽を利用する人(事業者・主催者など)は音楽を創作する人(作詞家・作曲家など)へ対価を提供。音楽を利用する人(事業者・主催者など)は音楽を楽しむ人(オーディエンス・リスナーなど)へ新しい作品を利用・発信。音楽を聴く喜び。

著作権と利用手続き

著作物を利用するときには、事前に著作権者から許諾を得る(利用手続き)必要があります。ここでは、利用手続きなく利用できる場合を含め、手続きの面から著作権について説明します。

支分権ごとに手続きが必要

著作権(財産権)は複数の支分権で構成されており、例えば演奏するときには演奏権、録音するときには複製権の利用手続きが必要です。また、各支分権について、その利用を行う人が利用手続きします。
<例.市販されているCDを、店舗のBGMとして流す場合>
働く支分権 利用手続きする人
CDの製作に係る複製権 レコード製作者
店舗で音楽を流すことに係る演奏権 店舗の経営者
なお、著作権者の財産的な利益を守る著作権(財産権)は、他人に譲渡したり相続の対象としたりすることができます。JASRACは、作詞者・作曲者・音楽出版社などの著作権者から、著作権の譲渡(信託)を受け、法律上の著作権者となることで著作権を管理しています。

編曲・替歌をするときの注意点

編曲や替歌、訳詞などにより著作物を改変する場合、著作権(財産権)だけでなく、改変の仕方によっては、著作者人格権の一つである同一性保持権の侵害になることがあります。
人格や名誉に関わる部分を保護する著作者人格権は、著作者だけが持つことのできる権利(一身専属)で、他人に譲渡することはできません。著作権(財産権)の権利者と異なる場合があるので、著作者人格権について了解を得る場合には注意が必要です。
なお、JASRACでは編曲権・翻案権の譲渡を受けていないため、編曲することなどについて許諾することはできません。

市販の音源を利用するときの注意点

「創作した人」の権利である著作権と、アーティスト(実演家)・レコード製作者・放送事業者など「伝える人」の権利である著作隣接権は、別の権利であり、利用の方法によっては同時に働くことがあります。
例えば、CDや音楽配信など市販されている音源には、①作詞者・作曲者などの著作権、②アーティスト(実演家)の著作隣接権、③レコード製作者の著作隣接権の3つの権利が含まれており、市販されている音源を利用する場合には3者への利用手続きが必要な場合があります。
<例:市販されている音源を店舗で利用するときに働く権利>
利用
方法
著作権 著作
隣接権
録音 (店舗で流すBGMや配布のため)CD-Rや携帯音楽プレーヤーにコピーする
インターネット配信 市販の音源を含む動画を動画投稿(共有)サイトに投稿する
再生演奏 CDを、そのまま店舗のBGMとして流す ×
※「○」は権利が働くことから、該当する権利者への利用手続きが必要です。

許諾を得ることなく利用できる場合

次のケースに当てはまる場合は著作権者の許諾なく利用することができます。

著作権の保護期間が終了している場合(著作権法51条~58条)

著作権は、創作と同時に発生し、原則として著作者が亡くなって70年(死亡年の翌年の1月1日から70年)が経過すると消滅します。保護期間が満了した著作物は、著作権者の許諾なく利用できます。 なお、無名・変名・団体名義の著作物(公表後70年)、映画(公表後70年)などの例外があります。また、第二次世界大戦における連合国民の一部の著作権については保護期間に関する戦時加算義務があります。

著作権が制限される規定に当てはまる場合

⑴ 営利を目的としない上演等(著作権法38条)高校の文化祭で生徒が開催するコンサートのように、次の3つの要件を"すべて満たす"場合、著作権者の許諾を得なくても上演・演奏・上映することができます。
  • 営利を目的としないこと
  • 聴衆又は観衆から料金を受けないこと
  • 出演者などに報酬が支払われないこと
⑵ 私的使用のための複製(著作権法30条)個人的または家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用する目的で、使用する本人が複製(コピー)する場合、著作権者の許諾を得ずに複製することができます。
ただし、違法にインターネット上にアップロードされたものと知りながら著作物をダウンロードする場合など、私的使用のための複製であっても違法となる場合があります。
このほか、著作権の制限には、「図書館等における複製」「引用」「学校その他の教育機関における複製等」などもあります(著作権法30条から50条)。

JASRACが利用許諾できないケース

JASRACなど著作権等管理事業者は法律上、「正当な理由がなければ、取り扱っている著作物等の利用の許諾を拒んではならない」(著作権等管理事業法16条)とされていますが、JASRACがそもそも権利の譲渡(信託)を受けていない、もしくは受けられない以下のようなケースについては許諾できません。

編曲・替歌など

著作者人格権(同一性保持権)は他人に譲渡できず、また、JASRACでは編曲権・翻案権の譲渡を受けていないため、編曲することなどについて許諾することはできません。
編曲などをする場合は、直接、著作者(もしくは音楽出版社)にお問い合わせください。

JASRACに信託されていない利用形態、支分権

JASRACでは権利者が指定した管理委託範囲に応じて楽曲の管理を行っているため、同一楽曲でも、利用の方法によってJASRACで許諾できる場合、許諾できない場合があります。

市販されている音源などを利用するときの著作隣接権

JASRACでは著作隣接権の管理を行っていないため、JASRACの管理楽曲であっても、市販のCDやダウンロード販売されている音源などを利用する場合、JASRACへの手続きと合わせて、レコード会社等著作隣接権者への手続きが必要な場合があります。

著作権法に違反した場合

著作権者の許諾を得ずに著作物を使用した場合は、著作権法違反となり、次の法的責任を負う可能性があります。
⑴ 刑事責任
著作権者は、著作権を侵害された場合、侵害者を刑事告訴することができ、その場合の罰則は原則として「10年以下の懲役」または「1000万円以下の罰金」となっています(著作権法119条1項)。
⑵ 民事責任
著作権者は、著作権を侵害された場合、次の方法により責任追及を行うことができます。
  • 侵害行為の差止請求(著作権法112条)
  • 損害賠償請求(民法第709条、著作権法114条)
  • 不当利得返還請求(民法703条・704条)
  • 名誉回復措置請求(著作権法115条)