MagazineJASRAC音楽文化賞

第11回JASRAC音楽文化賞受賞者を発表

「JASRAC音楽文化賞」は、売上や利用実績などの数字には表れない地道な活動を行っている個人・団体・作品等に光をあて、音楽文化の発展に寄与した功績を称え顕彰することにより、今後の活動への励みとしていただくことを願い、2014年11月に創設されました。

第11回の受賞者は次の方々に決定し、2024年11月18日、都内で行われた贈呈式にて表彰盾と副賞が贈られました。


<第11回JASRAC音楽文化賞 受賞者>
久保田 麻琴 様
一般財団法人 杉並児童合唱団 様
モントレージャズフェスティバルイン能登実行委員会 様

久保田 麻琴 様

顕彰理由

世界各地を巡り、地域や民族に根差した多様な音楽の魅力をCD制作や著書で紹介。また、国内においても全国各地に伝わる阿波おどりや、岐阜県・郡上の白鳥おどりなどの風土に伝承される伝統芸能を独自の視点で発掘・発信している。とりわけ沖縄の宮古島や周辺島々に何世紀も伝わる神歌や古謡を復元し、CDや映像に記録する作業は、民俗学的にも価値が高い。これら国内外の音楽を探求し後世に保存しようと尽力する活動は、豊かな音楽文化の醸成に大きく寄与している。

受賞者コメント(久保田 麻琴 様)

 私はJASRAC会員なのですが、そのJASRACから賞をいただくと聞いて驚きました。改めてお礼を申し上げます。これまでの私の活動は、大先輩たちが残してくれた貴重な資料によるものです。私はロック世代。ジャズ、ブルース、ビートルズなどの音楽に影響を受けてきました。

この日本列島にも、ものすごい音楽的な遺産があります。熊野の山でスピリチュアルな体験をするなど、日本の生々しいリアルに取り囲まれ、胸ぐらをつかまれ、のめりこんでいきました。今こそ、改めて感謝を申し上げたいのが、これまでの古い音源を保存してくださったレコード会社の皆さんです。そして何よりも、身をもって音楽をつないでくださった演奏者の皆さんにも感謝を申し上げたいと思います。

略歴・実績
1949年、京都市生まれ、石川県小松市出身。大学在学中に「裸のラリーズ」のメンバーとして音楽活動を開始。1972年に結成した夕焼け楽団およびザ・サンセッツとして、ニューオーリンズファンクやアジア的要素などを独自のグルーヴで融合させ、ワールドミュージックブームの先駆けとなる。90年代以降は多くのアーティストのプロデュースを手掛けるとともに、細野晴臣とのユニットでアルバムを発表するなど、精力的に活動。近年では南島音楽や阿波おどりなど、日本の伝統音楽を国内外に発信。宮古島の神歌に焦点をあてたドキュメンタリー映画「スケッチ・オブ・ミャーク」(2011年公開)を原案・出演、同作品はスイス・ロカルノ国際映画祭の批評家週間部門でスペシャルメンションを獲得した。

一般財団法人 杉並児童合唱団 様

顕彰理由

1964年の結成から今日に至るまで、高い水準で合唱団活動を維持し、多岐にわたって活躍する。また、「合唱ミュージカル」や、ポピュラー楽曲をアレンジした「杉並ポピュラー」など、オリジナリティー豊かな楽曲の開発にも力を入れ、数多くの作品を委嘱・発表している。同合唱団が中心となり、全国の指揮者と伴奏者の研修目的で発足した「杉並会議」は、1976年の初回以降、毎年参加団体が交代で研修大会を開催し、実技研修や活動の情報交換を行って演奏向上を図るなどの成果があり、全国の児童合唱団のけん引役となっている。

受賞者コメント(代表理事 森重 行敏 様)

私たちは60年前、1964年の東京オリンピックの年に、志水隆さんが創立しました。小学生の私は、第1回の演奏会を客席で聴いたことがきっかけで、2期生として入りました。創立者亡き後、財団法人となり今日に至ります。2021年の東京オリンピックでは開会式、閉会式ともに杉並児童合唱団の子どもたちの歌声が響きました。

昔の録音を聴いてみたら、今も昔も合唱団の子どもたちの歌声は変わらず、同じ歌声です。創立者のモットー「楽しくなければ音楽ではない」を引き継ぎ、60年歌い続けてきました。創立者も今回の受賞を喜んでいると思います。

略歴・実績
1964年志水隆(故人)により、東京都杉並区の桃井第三小学校合唱クラブを母体として結成される。時を同じくしてスタートしたNHKの子ども向け音楽番組に14年間レギュラーとして出演。「楽しくなければ音楽ではない」をモットーに、幅広いレパートリーを持ち、アニメ主題歌、CM、歌謡曲、NHK「みんなのうた」など多方面で活躍する。現在も3歳から大学生まで約230名が在団し、週2回のレッスン、夏合宿、年2回の定期演奏会に加え、テレビ番組への出演、レコーディングや舞台、各種イベントへの出演などさまざまな活動を行っている。今年60周年を迎え、11月24日に記念演奏会が予定されている。

モントレージャズフェスティバルイン能登実行委員会 様

顕彰理由

能登の夏の風物詩として、1989年から開催されている国内有数のジャズの祭典を主催する。毎回本場モントレーから選抜された高校生によるビッグバンドが来日し、七尾市内を中心にホームステイ等で市民とふれあい、交流を図るなど、地域の活性化にも貢献している。今年1月1日に発生した令和6年能登半島地震で今夏の開催が危ぶまれたが、音楽の力で被災者を元気づけようと入場無料、出演のアーティストも出演料なしで支援し、開催に至った。音楽を地域に深く根付かせる継続した取り組みを称えるべく顕彰する。

受賞者コメント(委員長 木下 義隆 様)

1989年から開催し、今年で34回目となりました。私は20年前から参加し、15年前から実行委員長を務めています。

今年1月1日の能登半島地震により被害を受け、屋外も屋内も会場が見つからない中で、ようやく利用できる広場が見つかり、開催することができました。このフェスティバルは、実行委員が中心となり、有志のボランティアとともに運営しています。これまでは、入場料を出演者への報酬などに充ててきました。しかし、今回は入場料をいただくわけにはいかないだろうと、出演者の皆さんに相談したところ「いいよ、いらないよ」と言っていただき、開催できました。音楽の力を借りて、復旧・復興に生かしていきたいという思いでした。

このフェスティバルは、毎年7月第4土曜日に開催します。ぜひ七尾市に来て、聴いていただければと願っています。

略歴・実績
世界三大ジャズフェスティバルの一つ「Monterey Jazz Festival(MJF)」の名称使用を世界中で唯一許諾され、1989年「第1回モントレージャズフェスティバルイン能登」を和倉温泉で開催し、継続開催してきた。ジャズを含む民間の交流を続けた結果、石川県七尾市と米国カリフォルニア州モントレー市は姉妹都市となり、両市のジャズを通しての国際交流が現在も続いている。国内外のプロの演奏家によるステージはもちろん、本場米国の開催目的の一つに倣い「ジャズの普及と教育」にも重点を置き、地元石川県内や国内招聘(しょうへい)の中高校生バンドと、MJFからの高校生バンドとの交歓合同演奏などで演奏技術の向上や国際交流に取り組んでいる。今年7月27日、34回目のイベントを七尾市の能登歴史公園で開催した。

第11回JASRAC音楽文化賞選考委員(報道社名五十音順)

河村 能宏 氏(朝日新聞東京本社 文化部 次長)
佐竹 慎一 氏(共同通信社 編集局文化部 副部長)
高橋 俊雄 氏(日本放送協会 解説委員室 解説委員)
吉田 俊宏 氏(日本経済新聞社 総合解説センター 編集委員)
清川 仁 氏(読売新聞東京本社 編集局文化部 次長)

推薦協力

一般社団法人 日本新聞協会

2024年11月18日、都内で行われた贈呈式での集合写真