Creators' View

JASRAC®一般社団法人 日本音楽著作権協会

トリハダが立つくらい自分が感動できなければ人の心を揺さぶれない。 林 ゆうき

トリハダが立つくらい自分が感動できなければ人の心を揺さぶれない。

林 ゆうき

きっかけは新体操の
BGM選曲

高校時代に新体操の選手だったこともあり、その演技のBGMを選ぶ必要から音楽に興味を持ちました。それまではギターのコードを鳴らすくらいだったのですが、選曲を続けるうちに、映像に合わせて効果音を挿入する作業を手掛けるようになって、編集で補えないと感じる部分にメロディを付け始めたのが作曲のきっかけです。

映像に音楽が付いた時の、感情を揺さぶられる感覚が自分を変えました。その後、新体操のBGMを作曲するようになり、違うフィールドで活動したくなって、今の仕事をやらせてもらうようになったんです。

創作時間を
確保するために

ドラマとアニメでは世界観が大きく違いますが、仕事柄、同時並行的に手掛けなければならないときが多くあります。ダークな世界にはまっているときに、明るいアニメの仕事で気分転換したり(笑)。

僕らの仕事は、出社時刻も休日も決められていないので、無理をしようと思えばいくらでも無理できます。ただ仕事を入れ過ぎると、構成のねじれに気づかなかったりするなど、必ずしわ寄せがきます。体調を崩せば多大な迷惑をかけるので、健康管理を含め、セルフマネジメントを心がけるようになりました。

それから、結婚して、犬が増えて、子育てを分担したりして、創作にかける時間が削られています。レストランに例えれば、以前はすべて自分で料理して、接客して、お会計の対応までしていましたが、今はスタッフを増やして創作の時間を確保しています。スタッフに仕事をお願いするときは、スタッフ間で伝言ゲームにならないよう、具体例を添えるなどしてイメージを共有しています。著作権の管理は到底手が回りません。そこまでやっていたら新作ができなくなります。

トリハダが立つ瞬間を
生み出したい

今自分が素直に感動できるのは何か、という観点を持ち続けたいと思っています。キャリアを積むと経験則が溜まります。人気レストランであれば『あの店に行けばアレを食べることができる』というのも大事ですから、作曲のオーダーを受ける上で自分の作風を意識するバランスは大事です。しかし、その経験則に縛られるとワンパターンに陥ってしまうので、3歳になる自分の息子のような、率直で天真爛漫な部分を磨き続けて創作と向き合う方が、後で後悔しないのではないかと思います。

劇伴について僕がいつも思うのは、音楽は映像のひき立て役ではなく「対等」だということ。一緒になることでプラス(+)になるのではなく"かける"(×)ことで相乗効果を狙わなければと。0.5秒ずらすだけで、盛り上がり方が激変することを意識して作っています。トリハダが立つ瞬間を生み出したいので。今、自分が一番作り出したい音楽には、その瞬間が欠かせません。その部分を聴いてもらいたいんです。自分でトリハダが立たなければ、また自分で泣けるものができなければ、人の心を揺さぶれないと思っています。

リアクションを
創作の励みに

自分が手掛けた作品で人に喜んでもらえるのがうれしいです。最近はSNSで『月曜が来るのが楽しみ』などと、ドラマの音楽についての感想が寄せられます。アニメだと、海外の反響もわかります。どの場面で盛り上がっているのかとか、ここで泣いてくれるのかとか、昔だったら、映画館で客席を振り返ることくらいしかできなかったんでしょうけど、リアクションは創作の参考になります。

地震や豪雨などの自然災害が続く中、自分の作っているものはライフラインほど大切なものではないかもしれない、と思う時があります。でも人々の生活を豊かなものにしてくれていたら、それは大きな喜びです。創作の励みになります。

より多くの作品を海外へ

自分の作品をより多く海外に展開できればと思うようになりました。でも、著作権管理がしっかりしていない国もあると思います。そんなことを考えると、海を越えた著作権管理団体同士の連携にも、問題意識を持って注目できるような気がします。

今年は作曲家として10周年になるので、海外を含め積極的にコンサートもやっていきたいです。

林 ゆうき

作曲家・編曲家/1980年生まれ/京都府出身
ペキニーズとラーメンと定食を愛する元男子新体操選手。アニメやドラマの音楽を幅広く手掛ける。主な作品:ドラマ「あさが来た」「リーガルハイ」アニメ「ハイキュー!!」「僕のヒーローアカデミア」「スタートゥインクルプリキュア」「からくりサーカス」映画「ONEPIECEFILMGOLD」「僕だけがいない街」ほか
2010年1月からJASRACメンバー