作家で聴く音楽 JASRAC会員作家インタビュー Interview
大島ミチル
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作曲家は職人と同じ
曲のイメージをオーケストラでどう表現していくかっていう感覚は、もう現場での経験が全て。この演奏家だったら音楽をこうしてみようとか、自分の好きなタイプの演奏家はこの人だとか、そういうのも全部経験で。映像に音楽を合わせるのも、いろいろな経験の中から、この映像にはこんなイメージのものがぴったりだなと思うものが出てくる。そうやって現場で経験を積んで、求められるものに応えられるようになっていくんだと思います。経験からのたたき上げという意味では、まさに職人ですよね?自分で少しずつ覚えていくっていう。しかもほとんど家にこもっていますし、決して華やかな仕事ではなく、コツコツととても地味な日々を送っていますよ。

アルバイトをしている頃は、たとえばCMなら15秒、メロディが4小節くらいだから、そのくらいなら自分にもすぐできると思っていました。でも、自分の好きな曲を書くだけだったら誰でもできる。そこからちゃんとニーズに応えられる音楽にしていくには、やはり経験が大切だと感じます。
“心に触れる音楽”を書きたい
音楽を書くうえで大切にしているのは、“心に触れる音楽”をつくりたいということ。音楽って人の記憶とつながりますよね。たとえば子どもの頃毎日あの音楽を聴いて学校に行っていたとか、あそこのレストランに行って友達とああいう話をしていたときに流れていた音楽とか。音楽はやっぱり人生に触れる部分があると思うんです。そんな、心に残る、心に触れるような音楽を書きたい。

今、NHKの大河ドラマ『天地人』の音楽を担当していますが、子どもの頃、大河ドラマ『国盗り物語』の音楽が大好きだったんです。林光さん作曲の。本当に好きで、楽譜は持っていなかったけれど耳で聴いて覚えて、エレクトーンでいつも弾いていました。だから今度、自分が大河ドラマの音楽を担当することになったとき、今の子どもたちが聴いて「あの曲弾きたいな」って思ってくれるような音楽を書きたいと思ったんです。そういう風になってくれるのが私の夢です。
自分の考え方を音にするのも楽しい
映像音楽を始めてからは、とにかく映像音楽が好きで、以後二十数年間というのは、それだけで満足していました。自分にとっての天職だなって、今でももちろん思っています。だからその間に純音楽を書きたいと思うことはありませんでした。
でも、ここ数年、自分がその時その時で考えていることを音にする機会ができてきて。フランスで出したCD(『For The East』、日本でも発売中)は、ちょうどそのとき北朝鮮の拉致問題などが報道されていて、アジアが抱えるいろんな問題をテーマに音楽を書こうと思って書いたものです。そういう、自分の考えを音にしようっていうスタンスで書くのも楽しいですよ。
今年は、日本でもコンチェルトを書いたり、フランスの音楽祭のために2、3曲書いたりと、映像音楽以外の仕事も増えています。もちろん映像音楽をお休みするわけじゃなくて、バランスよく仕事をしていこうと思っています。
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