業務用通信カラオケの使用料規定決まる

業務用通信カラオケに適用する規定について、JASRACは音楽電子事業協会AMEI加入の14事業者と合意しました。

規定は、著作物の利用の規模を評価する「基本使用料」と、事業者の得る情報料収入を一定率で評価する「利用単位使用料」の合算した額を月額使用料とする方式。複製権、有線送信権ごとに使用料を算定するのではなく、著作物データのサーバーへの複製から顧客店舗への送信、さらに端末機器への複製をひとつの利用形態として捉えて算定するものです。

 基本使用料は、利用可能な著作物数に応じて1カ月ごとに定めるものとし、包括的利用許諾契約を結ぶ場合は、アクセスコード数(事業者がデータに付与しているコード総数に97/100を乗じた数)に応じて定められた額(下表)を適用、これによらない場合は著作物1曲(利用時間5分まで)につき200円。

 利用単位使用料について包括的利用許諾契約を結ぶ場合は、受信装置1台につき1カ月ごとに定めるものとし、使用料は顧客店舗が通信カラオケ事業者に支払う1台あたりの月間情報料の10%の額または1,050円のいずれか多い額で、情報料の15%の額が1,050円を下回る場合にはその額または750円のいずれか多い額。包括的利用許諾契約によらない場合は、著作物のリクエスト回数に応じて定めるものとし、使用料は著作物1曲(利用時間5分まで)につき1回40円。

 通信カラオケは平成4年に登場しましたが、複製権や有線送信権が複合的に働く新たな利用形態であるため、著作物使用料規程第二章十二節「その他」の規定にもとづき、事業者と適用する規定について協議を重ねてきました。しかし交渉が長期化したことから昨年6月、AMEI加入の14事業者と平成7年9月分までを区切りとして暫定合意し、各社から使用料の清算を受けました。JASRACは暫定合意後、伝送系メディアについて改めて考えを整理し、新たな規定案を提示、慎重な協議を経て今回の合意に至りました。

 今回合意した規定は、平成7年10月に溯って適用されます。

    基本使用料(包括的利用許諾契約を結ぶ場合)

アクセスコード数 月額使用料(消費税別)
500まで 50,000円
1,000まで 100,000円
2,000まで 200,000円
3,000まで 300,000円
4,000まで 400,000円
5,000まで 600,000円
6,000まで 800,000円
7,000まで 1,000,000円
8,000まで 1,200,000円
9,000まで 1,400,000円
10,000まで 1,600,000円
12,000まで 1,800,000円
14,000まで 2,000,000円
16,000まで 2,200,000円
18,000まで 2,400,000円
20,000まで 2,600,000円
20,000を超える場合
2,000までを増す
ごとに加算する額
200,000円

「カラオケ5坪まで店」へDMを発送

 既報のとおり、客席面積5坪までのバー、スナック等および10坪までの宴会場に対するカラオケ使用料の免除措置が廃止され、来年2月1日から使用料が徴収されますが、JASRACは8月29日、環境衛生同業組合加盟店をのぞくカラオケ使用料免除届出済約5万店に対し、利用許諾手続申込書を同封したダイレクトメールを発送しました。

 対象店への発送は、9月中旬に同組合加盟の届出済店および加盟・非加盟を問わず見届けの飲食店約11万、10月中旬には電話調査で判明した手続の対象と思われる店6万および未確認店16万など、年度内5回を予定しています。

 ダイレクトメールの発送と並行して、9月17日には全国の地方紙、ブロック紙を中心に広告を出稿、支部においては2月までに全国あわせて800回の説明会開催を予定しています。

文化事業委員会、委員長・副委員長決まる

 著作権思想の普及を含む公益的文化事業の具体案を検討するために文化事業委員会が発足し、JASRAC会員の作詞者、作曲者、音楽出版者各4名計12名に委員を委嘱したことは、8月のマンスリー・インフォメーションでお知らせしましたが、この第1回会議が9月16日に開かれ、委員長に作詞者・松井由利夫氏、副委員長に作曲者・中田喜直氏を選任しました。

 JASRACは文部大臣・文化庁長官の諮問機関である著作権審議会に置かれた「使用料部会」から、著作物の利用範囲の拡大に備えて著作権思想の普及を推進するとともに、芸術文化の振興を図るなど社会的信頼を高めることが望ましいとの提言を受け、平成6年度に「文化活動委員会(中田喜直委員長)」を設置していますが、今回発足した文化事業委員会は、このときの文化活動委員会でJASRACが行うべき文化活動としてまとめた(1)音楽文化遺産の保存及び支援活動(2)次代の音楽文化発展のための諸支援活動、また昨年閣議決定された「公益法人の設立許可及び指導監督基準」等を踏まえて具体案を策定していきます。

ニューヨークでニューメディア対策会議

 9月15、16日、オンライン上での著作物利用に対する許諾のあり方などを検討するニューメディア対策会議が、アメリカの演奏権管理団体ASCAPの呼びかけでニューヨークで開催され、欧米豪などの演奏権、録音権管理団体17団体から30名が参加、JASRACから送信部ネットワーク課職員2名が出席しました。

 今回の会議では、ASCAPほか参加団体であるアメリカBMI、HarryFox、イギリスMCPS−PRS、オランダBUMA−STEMRAがオンラインで著作物を利用する場合の使用料率などを報告、JASRACはオンラインで著作物が利用される場合の許諾の基本的な考え方として、支分権ごとに使用料を算出して合算する方法を採らず、ひとつの利用体系として設定する考えであることを説明しました。

 またプロバイダーの法的責任が議論され、現在プロバイダーから使用料を徴収している団体はないが、プロバイダーが著作権侵害を認識しながら放置している場合、プロバイダーにも法的責任を問うべきとの意見が大勢を占めました。

 オンライン上での著作物保護の実効性を高めるため研究・開発が期待されている「電子透かし技術」を利用したコピライト表示については、9月上旬にマイアミで行われた国際音楽見本市MIDEMでの会議で、同技術の規格統一を検討する「技術委員会」の設置が決まったことが報告されました。

カナダでALAI国際会議

 9月15から17日までの3日間、カナダのケベック州モンテベロで、著作権および著作隣接権に関する学術団体ALAIの国際会議が開かれ、24カ国から200人余の関係者が参加、JASRACからは演奏部職員が出席しました。

 今回は「契約による著作者と実演家の保護」をメインテーマとし、各日ごとに与えられたサブテーマについて各国の著名な学者、法律家らが研究報告等を行いました。

初日は「個人的な契約」をサブテーマに、著作者、実演家が利用者と交わす契約をとりあげ、企業など利用者側が経済的に優位に立つ実情があり、法制度が整備されていても権利者を十分保護する契約が結ばれていないなど現状が報告されました。

 2日目と最終日は「著作者・実演家の権利の集中管理」、「著作者・実演家の組合が締結する集中契約を通じた著作者・実演家の保護」をサブテーマに、集中管理団体と権利者が交わす契約の今後のあり方、労働組合的な権利者団体の必要性などが報告されました。

第1回CRIC賞論文に9名が入選

 著作権情報センターCRICが私的録音補償金管理協会SARAHからの共通目的基金をもとに、次世代を担う著作権法制の研究者・実務者の研究を奨励することなどを目的に募集した懸賞論文、第1回CRIC賞の表彰式が9月3日、CRIC事務局で行われました。

 応募総数18論文のなかから選ばれた9つの入選作と受賞者は次のとおりです。

大学の学部学生の部

佳作 吉永一行(京大法学部)
   「インターネット上での著作権侵害と、アクセス・プロバイダの民事責任」

大学院生・大学助手・司法修習生・一般社会人の部

一等 後藤勝也(第50期司法修習生)
   「マルチメディア社会における著作権の『間接侵害』」

二等 上野達弘(京大大学院)
   「ECMSにおける著作権及び著作者人格権に関する一考察」

三等 平嶋竜太(東大大学院)
   「著作権法によるソフトウェア保護の将来的展望」

佳作 児玉晴男(東大大学院/(株)培風館編集部)
   「著作権法制が直面する課題−著作権・著作隣接権とsui generis rightとの関係−」

同 フイ・トン(中国四川大学講師)
   「中国著作権法の現状と問題点−日本の著作権法と比較して」

同 野方英樹(JASRAC)
   「WEBサイトに関する著作権法上の新たな支分権の創設について」

同 松田俊治(第50期司法修習生)
   「マルチメディア社会が著作権法に与える影響についての一考察」

同 本山雅弘(吉田国際特許事務所)
   「著作権法制が直面する課題−デジタル・ネットワーク社会における実演家保護制度−」


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