|
|
|
初めて僕が担当したのは、1990年の「三びきのこぶた」です。最後はこぶたとオオカミとの間に友情が芽生えて握手しちゃうっていう、一般的なストーリーとは全然違う内容だったんですが、そのオオカミが子供たちに大受けしました。音楽の評判も良かったんです。
子供向けのミュージカルなんですが、子供に合わせることはしませんでした。分かりやすいメロディーである必要はあると思いますが、必ずしも子供が聴きたい音楽が子供っぽいものとは限らないと思うんです。子供向けだからといって目線を下げたりすることはせず、全体の構成や作品性を考えて音楽を作りました。
ミュージカル作品を作るときに注意しなくてはいけないことは、役者の技量を考慮する必要があるということです。役者のクオリティー、芝居のセンスと歌唱力を確認したうえで一番いい作品を作る必要があるので、基本的には役者に「あてがき」(※)します。
もうひとつは、時代背景とか、その当時の音楽とかを寝ながらでも脳に入れて、体に叩き込みます。ミュージカルのストーリーや場面展開など、まずはそこからですね。最初はスケッチから始めます。演出家と打合せしながら、台本の上のところに楽譜を走り書きしたりして。曲を作るのはそれからですが、2週間くらいでできますね。時間が限られているのは商業演劇の宿命です。でも、短期間の方が、鮮度が落ちなくていいんです。
(※)作家が最初から、演じる役者を想定して書き下ろすこと。あるいは映像に当てはめて書き下ろすこと。 |
|
|
|
ファミリーミュージカルをやっていると、目の前のお客さんの反応が分かるので、映画音楽の仕事をするうえでも、大きな力になりました。映画の場合はお客さんの反応が直接見えないので、監督に意見を言うときも、ミュージカルの経験があったことは強みでした。また、ラウンジピアニストをやっているとき、お客さんがいいと思っている瞬間を感じることができた、その経験も活かせたんだと思います。
僕のところには泣きのメロディーが欲しい時に依頼が来るんですよ。それは、僕がイタリアの映画音楽の影響を受けていたことが大きいですね。メロディアスな音楽のテンポ感が好きなんですよね。一見そういう音楽から遠いようなVシネマの任侠ものにも、意外とロマンチックな曲が多いんです。すごく甘い曲とか。関係者には「泣きのカミオ」とも言われました。
映画音楽を担当するということは、音楽を作るだけではなく、映画全体のプロデュースっていう意味合いもあります。だから、引き出しが無限にないと無理ですよ。言われたらなんでも出せます。今もテクノ作ってます。ジャンルは関係ありません。音楽はセンテンスですから。楽器が変わるだけです。
映画音楽と並行してゲーム音楽もたくさん手掛けました。まだゲームが出始めた頃から作曲していましたが、当時からゲームも色々なジャンルのものがありました。
ゲーム音楽はオーケストレーションできるので、面白い仕事でしたね。僕、打合せはしつこいですよ。全部打合せしてからじゃないとやりません。でも、打合せさえしっかりしておけば間違いないです。具体的なプランがある人からはアイデアをもらった方がいい。それ以外の曲を作っても喜ばれませんから。 |
|
|
|
今まで色々な作品を手掛けてきましたが、その中でも「バーバパパ」の音楽は大好きですね。12年前にこの仕事のコンペの話をもらった時、偶然「バーバパパ」の生まれたフランスに行っていたんですよ。それが良かった。コンペには絶対参加したかったので、フランスで色んな作品を見たり、街を何回も散策したりして肌でその文化を感じました。フランスの作品ですから、描き方を含めて日本っぽいところは一つもない。なので、音楽に関してもフランスで感じたまま、流行に流されることなく自分が書きたいものを書きました。いずれにしても、最終選考は原作者が決めますから。ああいった音楽を応募したのはたぶん僕だけです。
曲調はとても単純なんですよ。コードの羅列をちょっとずつ変化させただけなので、日本のアニメのコンペなら落ちますね(笑)。 ただ、ひとつのテーマ、ワンフレーズを押し続けるんです。そこにオーケストレーションの厚さもあって、重厚感が生まれ、そういうのがヨーロッパの人にも受けたのかな、と思います。そして、必ず途中にちょっと泣けるメロディを入れます。子供たちがポロンと涙をながしたり、そういった場面がまたいいんです。
登場するキャラクターの中では、やっぱり主役のバーバパパが好きですね。絶対笑顔なんですよ。どんなに子供が悪さしても叱らず、助けるときはいつも笑顔。絶対的な安心感、音楽もそういったイメージから作りました。映像に合わせて曲を作る完全な「あてがき」でした。僕が望んだのですが、実際に一話ずつ絵を見ながら音楽をはめていく作業は大変でした。その一年間は「バーバパパ年」でしたね(笑)。でも、今年JASRAC賞の国際賞を受賞して日の目を見て良かったと思っています。 |
|
|
|
現在「ブルーレディオドットコム」というインターネットラジオのオーナーをやっています。今年の12月で開局11周年になります。開局当初はまだダイヤルアップ接続でしたし、ダウンロードに時間がかかってました。でも、そのうちインフラが整うだろうと思っていました。
インターネットラジオをやってみようと思ったのは、メディア難民が増えてきたなって思ったことが発端です。昔は、テレビやラジオに色々な分野の専門家が出てきて、番組を担当してみたりとか、なんか喋ってみたりとか、そういった企画がたくさんあったんですが、最近減ってきてしまったように思うんです。本当に世の中でしゃべらなくちゃいけない著名人、専門家たちがしゃべる場所がなくなっているんじゃないかな、と。やっぱりみなさん、自分がやってきたキャリアを言霊として残したいと思うんですよ。一言一言が遺言じゃないですか。それを記録したい、放送したいと思ってやっています。最近では映画関係者からも出たいってリクエストが増えてきて、メディア難民の多さを改めて感じています。 |
|
|
|
映像音楽を手掛けるのであれば、視野を広く持つことが必要です。引き出しをいっぱい用意しておくことですかね。
そして、最終的には人ですよ。自分を分かってくれる人と、分かってくれない人とがいるかもしれないですけれど、自分がやりたいことがあったら、それを一生懸命訴えるしかないですよね。分かってもらえなくても言うしかないです。自分を信じるしかないんです。それが世の中に必要か必要じゃないかを判断するのは自分じゃないですから。それの繰り返しです。僕もいまだに繰り返してますけど(笑)。 |
|
|
|
|
|
|
|
アンケートにお答えいただいた方の中から抽選で3名様に、以下のDVD-BOXをプレゼントいたします。
(応募締切日:2012年2月29日) |
|
「サンリオぽこあぽこ DVD入りBOX」
神尾さんが音楽を担当した知育・しつけDVD全5巻。キティ・シナモン・ウサハナと一緒に、言葉や数字やしつけを学べます。かわいい指人形などの豪華な特典が付いています。神尾さんのサイン入りです! |
|
※応募は締切りました。 |
|
|
|
|
|
|
|