船村: |
岩手県にはたまに釣りに行きますけど、よいところですよね。
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大瀧: |
四国と同じくらいの広さがあるんですけど、北上から南が伊達藩で北は南部藩と文化が全く違うんですよね。面白いのは、宮古や釜石、気仙沼といった海岸沿いにもまた独自の文化があったりして。花巻出身の宮沢賢治の「風の又三郎」などを見ていると、やはり原風景として残っているものはあります。
東北の人はまじめなタイプの人間が多いと思うんですが、史実を紐解くとホラ話なんかも出てきたりして面白いんですよ。本当か嘘かというのは野暮。民話を民話として聴く面白さがある。また、調べたところでは岩手県の民族芸能の数は世界一らしいですよ。
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船村: |
土地の歴史的な話には夢がありますよね。遠野で釣り糸を垂れていたりすると、「河童が出てきたりして・・・」なんて思ってしまいますし(笑)。
東北は土着の文化ですよ。土の匂いがする。それぞれに遺産があって、朝廷とはまた違う文化を持っていたのでしょう。侵されない、守る文化というイメージですね。
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大瀧: |
踊りにしたって、北方は下半身の動きが重要だと思います。言わば「地鎮」なんですよ。リズムにも「じっくり感」がある。重心の低さというか。それに、オリジナリティーがあるんですよね。
面白いことに宮沢賢治は、生前に出版したのは「春と修羅」だけなんですよ。その後、弟さんや周りの人たちが他の作品を公にして有名になりましたけど、それがなければずっと眠ったままだったのです。これはいかにも東北的ですよ。「知られなければ別によい」というか・・・。
それに、東北の人には、背中からジワッとくるような独特のユーモアがある。スピード感があってテンポのよい関西圏のそれとは明らかに違いますね。
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船村: |
それだけに奥が深い部分がある。奥行きを感じますよ。
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大瀧: |
ともあれ、重心の低さでは船村先生が日本一ではないですか?充分どっしりとしているのに、その先生が「古賀メロディーが書けなかった」とおっしゃるのがまた興味深い。
実は私も、似たようなものが書けるだろうと思って、森進一さん、小林旭さんに1曲ずつ書いてみましたが、これがどうにも難しかった。形だけ低くしてもダメだなと思い退散したんですよ。やはり、山と相撲を取っても勝てるわけがないですよ(笑)。「はっぴいえんど」時代は、オリジナルなもの、自分にしか出来ないものは何かと考えて、宮沢賢治とかイーハトーブの世界を意識したことはありましたね。
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