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もともと絵描きになろうと思ってた位だから、将来JASRACの世話になるような作曲家になるとは想像していませんでした(笑)。 自分にとっては「作りたいから作る」というのが原点ですが、プロとしてやっていく上では、作った作品の対価がキチンと著作権料という形で還元されるシステムは重要です。スポーツ界でも、サッカーや野球のように金銭的なインセンティブが大きい所に、やっぱり優秀な人材は集まりますよね。 「きちんとお金になる」って事も含めて、俺自身はミュージシャンや作曲家が子供達の憧れる存在であってほしいと思っています。「CDが売れなくて不況だ」って大騒ぎしてるけど、誰も業界のあるべき将来像みたいなものを示してないでしょ。だったら、JASRACみたいな団体が先手を打って将来のあるべき姿を示していってほしいですね、単に著作権の管理だけではなくて(笑)。 個人的には、ネットの音楽配信にも興味があります。1枚1000円だったら買わない人にも、流通のコストを省いて200円で提供したら購買意欲が増すだろうとは思うし。でも、セキュリティや権利処理の問題が不明瞭な現状ではハッキリ言って積極的になれない。 ファイル交換ソフトを使って、音楽をダウンロードしている連中もいるけど、売り物をタダで盗むっていう行為は後ろめたさもあって、不安なんじゃないでしょうか(笑)。だったら、俺なんかは高くても正規品を買おうって思います。 創作者の立場では、音楽やIT関連の企業・団体がタッグを組んで信頼性の高い配信システムを作ってほしいですね、しかもどこか1社だけの限定されたシステムじゃなくて。俺自身はそういうことの先頭に立つ人間じゃないけど、便利で安心なシステムが完成したら是非使いたいと思いますね。 俺の中では、自分が歌うためのソングライティングは他人への曲提供とは全く別個の位置付けとして考えています。かつては、自分の作品を作ることは自身の「治療行為」という意味合いが強かった。人に曲を提供する場合と違って、「売る」という目標もないし、極端に言うとリスナーがいなくても作ると思いますね。歌詞のテーマも個人的に感じていることを表現することが多いけど、社会で起こっている事件に対するメッセージや意見みたいなものはストレートには入れたくない。45歳の人間として社会問題に対する意見はあるけど、歌詞のテーマは時代が経っても納得できるような「普遍性」を持たせられればいいな。 今の俺は作曲をするよりも、ボーカリストとしてライブで歌うことが「至上の喜び」なんです。そんな気持ちになったのは、2000年の夏にスペインで強盗に襲われた時に声帯を潰されて、話すことさえままならなくなった事件がきっかけだった・・・。 声が出なくなった時に音楽を仕事にするのは止めようと思ったけど、歌うことへの情熱が自分の背中を強く押してくれた。去年あたりからライブで歌う機会も増えて、「オレって味わい深いボーカリストになったなぁ」ってつくづく感じています(笑)。 俺は趣味と本業が一致しないとダメな人間なので、音楽を趣味として楽しんでる部分が大きい。でも、今は自分が楽しむだけじゃなく、ライブに来てくれるお客さんに幸せを与えられる自信が出てきました。ポップス人間としては若者向けのティーンズ・ミュージックも好きだけど、いろんな経験を経た大人が作る音楽の良さをもっとアピールしていきたい。60歳を過ぎたあたりで「織田哲郎ってイカした歌を歌うじい様だ」って尊敬されるようになったら、本望ですね(笑)。
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