音人工房

JASRAC 日本音楽著作権協会

第13回 杉山 勝彦 Katsuhiko Sugiyama

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  3. Vol.3

Vol.2 デモテープでも最後まで 楽しんで聞いてほしい

普段曲づくりはどのようにされていますか?詞と曲はどちらを先につくるのでしょうか?

杉山:曲を提供するアーティストが、今はキャリアの中でどのフェーズにいて、次にどこを目指そうとしているのか、という戦略、音楽史全体の中で、今はどういう流れにあって、次はおそらくこうなるだろう、というビジョン、タイアップの楽曲であれば、スポンサーの狙いやそのアーティストと接点を持った理由など。さまざまな要素を分析し、今求められている曲に対して自分の色をどのように落とし込んでいくか、ということを考えて、曲のイメージや肌触りを緻密に組み立てていきます。ピアノやギターに触れるのは基本的にそれからです。
作家になって最初の3年くらいは、ほとんど詞を先に書いていました。自分なりのメロディーをどうやったら引き出せるのか、クリエイティビティを発揮するためには何をやったら良いのか、試行錯誤を重ねていた時期があったんです。人間って、枠を与えられることによって、できなかったことができるようになるような部分があると思うんですね。独創性のあるメロディーを引き出すために、ピアノからパッと触ったとしても、無意識にそのプロセスを経ていると思います。

デモテープはどのくらいのクオリティでつくり込みますか?

杉山:同業者からもよく受ける質問ですね(笑)。ものすごくハードルが高いことですが、友達に聴かせて、そのデモテープを持って帰りたいと言ってもらえることを目指しています。僕は、スタッフの方々に聴いてもらう場面においても、音楽が1度消費される、という考え方を持っています。曲だけをオーダーされたときでも、フルコーラス分の歌詞まで書いて渡すこともよくありますね。せっかく誰かに聴いてもらえるのだから、完成されたアレンジとフルサイズで最後まで楽しんでほしい、と思うんです。大変な作業ですけど、こういったスタンスで続けられる人が最終的には強いのかな、と僕は思っています。

自身のキャリアの中でターニングポイントとなった作品はありますか?

杉山:中島美嘉さんが歌う「一番綺麗な私を」です。以前、ゴッホの絵を見に行った際に、画風の変遷に感動し涙したことがありました。ゴッホの苦悩を感じ、なかなか結果が出せないその頃の自分と重なったこともありまして。絵画からヒントを得て、浮世絵の人物が印象派の点描の風景を歩いているイメージを音で表現したいと思いました。歌詞を見ながら曲を聴いていただくと分かるんですけど、日本語のイントネーションとメロディーの上下が合わせてあるんです。これは先に詞を書かないと絶対にできないことで、まさに続けてきたことが結実した作品になりました。有線放送など、世間で広く流していただきましたね。当時住んでいた家の前のコンビニエンスストアに行った時、たまたまこの曲が流れていたんです。自分の部屋からこの場所に音楽を移動させるために、これだけ歯を食いしばってやっているんだな、と感慨深いものがありました。店員さんに、「この曲僕がつくったんですよ!」って教えたくなりましたよ。言えなかったですが(笑)。

フォークデュオ「TANEBI」では、ギタリストとしても活動されていますね。

杉山:僕はバンドブームの中で育ったので、基本的にはアーティストに憧れているんですね。アーティストの生きざまやつくり出す音楽に痺れて、僕自身の人生を変えてもらえましたから。おこがましい話ですけど、アーティストの先輩たちが続けてきたリレーの中に自分も加わりたい、という気持ちがすごく強いんです。自分の音楽や生きざまを作家として作品を通じて伝えていくこともできますが、ステージに出てバーン!って演奏する方が分かりやすいですからね。欲張りなんです。でも、アーティストはバラバラに曲を出してしまうと何をやりたいのか分からなくなるので、反対に作家の自由度の高さは感じられるようになりました。
それからやはり、一緒に悩み支え合って同じ舞台で拍手を受けられる、上田和寛という相方がいることは、幸せなことです。自分がちょっと折れそうになっても、相手が折れていなければまだまだ大丈夫、と思えますから。

音人工房 -OTOBITO KOBO-

杉山さんのプライベートスタジオ

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  • FENDER / JAZZ BASS
  • Hughes and Kettner / Triamp mkII
  • FENDER / Hot Rod Deluxe III

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アンケートにお答えいただいた方の中から抽選で5名様に杉山さんのサイン入りCD「再勇記」(TANEBI)をプレゼントいたします。

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