音人工房

JASRAC 日本音楽著作権協会

第11回 磯貝 サイモン Simon Isogai

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  2. Vol.2
  3. Vol.3

Vol.2 想いを明確に伝えられる曲づくりを目指す

高校卒業後から、事務所に所属されたんですか?

磯貝:いいえ。イベントにたくさん出演するなど、地道にライブ活動を続けていたなかで、インターネットのインディーズ音楽配信サイトで偶然に僕の音楽を聴いて気に入ってくれた音楽事務所の方がライブに来てくれました。その方との出会いがきっかけで、その事務所に所属してデビューすることになりました。

2011年に事務所を独立されたきっかけは?

磯貝:自分の周りにも事務所から完全に独立して活動をされている方が何人かいらっしゃって、その方たちのアドバイスを聞きながら決めました。もちろん事務所ともきちんと話をしましたよ。

独立後の活動に変化はありましたか?

磯貝:事務所にいた頃は基本的にはアーティスト活動のみでしたが、独立してからは自分で差配できるようになったので、演奏の仕事やアレンジの仕事など仕事の幅が広がってきました。充実しているんですけど、時間の使い方が年々難しくなってきているなという感じはあります。

作詞・作曲はどのような方法で行うんですか?

磯貝:普段の生活の中で、特に意識しないで生まれるアイデアだったり、メロディのかけらだったり、歌詞を書くためのモチーフだったりをすごく大事にしているので、基本的にはまったく楽器を持たないようにしています。こういう曲を書きたいなとか、こういうテーマでつくってみたいなという題材をまず自分の中で溜めていって、ギリギリのところまで楽器を持たずに想像だけでつくるんです。口ずさんだり、文字で書き出したりはします。最近だとiPhoneに文字を打ち込んだり、ボイスメモを使ったりしていますね。ある程度つくってみて、これはできたなと思った段階で、初めてギターかピアノで弾いてみます。いざ具体的に音にしてみると脳内でイメージしていたものと違うところがあったりするので、どちらを大事にしたらいいのか精査しながら進めます。

イメージの段階で作詞もされるんですか?

磯貝:詞とメロディを少しずつつくって、なるべく作曲脳と作詞脳とを二人三脚で進めるようにしています。自分の中でよっぽど気に入ったメロディができたら、メロディだけ書きとめたりもするんですけど、そうするとどうも進まなくなってしまうことが多いんですよね。並行して制作を進めるほうが、より詞とメロディが噛み合ったものが生まれるし、なんといっても同時にできる方が快感なんですよね。

作詞・作曲をするなかで、ご自身のこだわりはありますか?

磯貝:歌詞カードをわざわざ読まなくても、音だけで耳に残って心で理解できる歌詞を心掛けています。だから、文語体よりは口語体を使うことが多いかもしれません。メロディというのはあくまで感覚的なものだと思いますけど、歌詞は「言葉」なので、誰でも感じ取って感想を述べることができるものだと思うんです。だからより一層、歌詞はメロディよりも緊張感を持ってつくってますね。

ライブを意識して作詞・作曲されますか?

磯貝:はい。特に最近はCDで伝えるよりも、ステージで直接伝えるということに重きを置いているので、常にライブを意識しながらつくっています。端的に言えば、ライブでアコギ1本で歌った時に、その曲を初めて聴いた人にも、その曲がどんな曲で何を伝えようとしていて、どういう風に感じてほしいかというところまでを明確に伝えられる曲を書きたいんです。

提供作品も、ライブで歌われることを意識しますか?

磯貝:提供した作品もきっとライブで歌われることがあるでしょうから、会場にこういう風に響いてほしいな、お客さんに届いてほしいな、というのをイメージしながら書くことが多いです。

制作スピードの違いはありますか?

磯貝:提供作品の方が明確な指針やオーダーがあるので、出来るのは早いですかね。締切も結構タイトなことが多いですね。5日もあればいい方だったりします。一番タイトなのは20時間後とかありました(笑)。

提供作品で、印象に残っている作品を挙げてください。

磯貝:Kyleeに提供させてもらった『CRAZY FOR YOU』は、CMソングとして15秒位しか流れなかったのに、キャッチ―だと言ってもらえることが多くて、純粋に音楽の力で広まっていったんだなと当時強く感じました。未だにカラオケなどでいろんな人が歌ってくれているようなので、当時の10~20代を中心に浸透したんだなというのをすごく実感した曲です。

これまでのキャリアで、ターニングポイントになった出来事は?

磯貝:寺岡呼人さんとの出会いが大きいです。デビュー当時に、たまたまラジオ局で知り合ったんです。無名な僕を色々な現場に引っ張っていってくれて、色んな方を紹介してくれました。その出会いが、アレンジの仕事やツアーサポートの仕事に繋がったと思っています。

「あの時があるから今がある」といった経験はありますか?

磯貝:楽曲提供のチャンスと時間を与えてくれた当時の事務所があったからこそ、曲づくりの幅と経験値が広がりました。所属していたその期間にほとんど今のセオリーが構築されたんじゃないでしょうか。それまでは、本当に行き当たりばったりでずっとつくっていたように思います。あとは、子供の頃から周りに音楽がある環境を与えてくれた両親がいたからこそ今がありますね。

音人アイテム -OTOBITO ITEM-

磯貝さんの創作活動に欠かせないアイテムをご紹介!

「Freedom Custom Guitar Research」というメーカーにカスタムオーダーした「Green Pepper」です。
「Fender」の「Telecaster Thinline」のヴィンテージをずっと探していた中で出会ったんですけど、このギターのサンプルを弾かせてもらった時に、音が自分の好みにドンピシャで。子供の頃からこういう音がするエレキがずっとほしいと思っていて、まさに理想どおりの音でした。
中身が空洞になっていて、それが音の深さを生んでいるんですよね。アンプに通さなくても「これはいい音だな」って分かる生々しい音をしています。自分のライブだったら、エレキはまずはコレですね。

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