音人工房

JASRAC 日本音楽著作権協会

第10回 富貴 晴美 Harumi Fuuki

Profile

1985年生まれ 大阪府出身
国立音楽大学音楽学部を首席で卒業後、同大学院音楽研究科修士課程を修了。
在学中からCMなど映像作品の音楽を作曲。以降、映画やドラマを中心に、数々のサウンドトラックを担当。これまで手がけた作品は、映画「京都太秦物語」、「はじまりのみち」、「駆込み女と駆出し男」、「百日紅~Miss HOKUSAI~」、「日本のいちばん長い日」、ドラマ「明日の光をつかめ」シリーズ、「花嫁のれん」シリーズ、連続テレビ小説「マッサン」など多数。
「わが母の記」で第36回日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞。
2008年12月からJASRACメンバー。

■Official web site
http://www.harumifuuki.com/

【取材協力】
株式会社インスパイア・ホールディングス

アンケートにお答えいただいた方の中から抽選で3名様に富貴さんの直筆サイン入り色紙とCDをセットにしてプレゼントいたします。

※応募は締め切りました。たくさんのご応募ありがとうございました!

  1. Vol.1
  2. Vol.2
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Vol.1 映画音楽との出会い -作曲家を志したきっかけ-

はじめに、音楽との出会いを教えてください。

富貴:5歳の時に、友達と一緒にピアノを習い始めて、ピアノが大好きになりました。どんどん弾けるようになって、1日4~5時間は必ず練習していましたね。朝、幼稚園へ行く前に2時間、帰ってから2時間、毎日弾いていました。

ピアノを始めて、音楽に目覚めたんですね。

富貴:小学校1年生くらいの時にドビュッシーやラヴェルをCDで聴きました。中でも『亡き王女のためのパヴァーヌ』は、なんて素晴らしいのだろうと思って、どうしても弾きたくなりました。先生にはまだ難しいと言われたのですが、ピアノの譜面を買って自分で弾き始めました。

映画もお好きだったとお聞きしました。

富貴:母の影響もあって、幼稚園のときから、毎日8本くらい映画を観ていたんです。「カサブランカ」や「アラビアのロレンス」、「風と共に去りぬ」、「ベン・ハー」などの古典作品や、黒澤明監督、木下惠介監督の作品を観ていました。音楽が良いと思うと、観るのを止めてすぐにピアノで弾いたりしていましたね。

映画音楽で、作曲家を意識したのは?

富貴:本当に作曲家になりたいと思ったのは、「タイタニック」がきっかけです。12歳のときに、友達と映画館へ観に行って、初めてサントラを買いました。メインテーマはピアノソロだと切なく聴こえるのに、オーケストラだととても派手で格好よくて、全く違う曲に聴こえるんです。映画を観た直後から、「私もこういう曲を書くんだ!」と、とても感化されて(笑)。それからオリジナルの曲を、まずはピアノでつくり始めました。ピアノソロをつくったら、いつか自分もあんな風にオーケストラアレンジをしたり、シンセサイザーの打ち込みを混ぜたりできるようになるんじゃないかと思って。

その当時、何曲くらいつくっていたんですか?

富貴:その時は、1日1曲はつくっていましたね。

学校で部活動はされていたんですか?

富貴:中学ではバドミントン部と吹奏楽部に所属していて、吹奏楽ではチューバやユーフォニアムを吹いてました。

チューバは中学から始められたんですか?

富貴:そうです。本当はフルートをやりたかったんですけど、じゃんけんがめちゃめちゃ弱くて(笑)。ずっと低音ばかり吹いてました。でも、作曲をするときに低音の動きってすごく大切なので、あの時にチューバをやっていて良かったなと思っています。とても勉強になりましたね。

音大に進学されたきっかけは?

富貴:中学時代に、音楽大学や作曲学科があるということを知りました。それで、母と近くのヤマハに行ったんです。受付にいたおじいさんに相談したら、たまたまその方の知り合いが音楽大学の作曲科にいらっしゃって。そこで、紹介してくれたのが国立音大の中原健二先生でした。
次の日に、中原先生のところへ伺って、自分で書いた曲を見せたんです。そうしたら見るなり、弾くこともせず「全然なってない」「まず和声の勉強をしなさい」と言われて、和声学の勉強を始めました。
でも、つまらないものなんです、和声学って(笑)。「これをしてはならない」という禁則ばかりで。その時は、「何でこんなにがんじがらめなんだろう」って不満だったんですけど、やり終えた後に気づいたのは、和声を学ぶことによって縦の軸が見えて、譜面を読むだけで頭の中で音楽が鳴るようになったんです。

大学では、現代音楽を専攻されたんですね。

富貴:たくさん映像作品を観て音楽を研究しつつ、高校3年生から機材を買いあさって、DTMでドラマや映画の音楽をつくり始めていたんです。CM音楽も自分で30秒と決めて作曲したり。商業的な音楽は、自分が家でやっているようなことだったので、大学で学ばなくても大丈夫かなと思いました。

現代音楽には興味があったんですか?

富貴:現代音楽は、何がいいのか、どうやって聴くのか、どうやって作曲するのかも分からなくて、未知の世界でしたので、とても興味がありましたね。それから、小さいときに観ていた「乱」など黒澤明監督の作品の音楽は、武満徹さんが作曲されていて、現代音楽を学んでいれば、いつかドラマや映画にも役立つのではと思いました。大学では、自分が独学でできないものを教えてもらおうと思いました。国立音大には、現代音楽の権威の先生方がたくさんいて、私は福士則夫先生につくことができました。学び始めると、それまでただ不協和音にしか聴こえなかったものが、「ここはこれで面白いんだ」「これがいい曲なんだ」と分かるようになりました。自分で楽譜を書くのも楽しくなって、どんどんハマっていきましたね。

プロとして仕事を始められたいきさつを教えてください。

富貴:「洗剤のCM」や「コーヒーのCM」など自分でテーマを決めて曲をつくり、CM音楽の制作会社にデモを送りました。ほとんど落ちてしまったのですが、ミスター・ミュージックという制作会社から連絡が来ました。社長さんに、「すぐに作曲家は無理だろうから、最初はうちの事務をやりながら、作曲家の現場を見なさい」と言われて、事務仕事をしながら空いた時間に現場へ行ったりしていました。そういうことをしていたら、おもちゃのCMコンペの話を頂きました。嬉しくて、家で曲を書いて出したら、それが通ったんですよ。初めての仕事が、そのままテレビで放映されたんです。
それを機に、仕事としての作曲が始まりました。

特に好きなジャンルや、影響を受けた作家はいますか?

富貴:ロシア音楽が好きなんです。ロシアへ留学したいって思うほど、昔から好きです。自分の曲の底辺にも、その想いがありますね。ハチャトゥリアンやラフマニノフ、チャイコフスキー、そしてロシア5人組と呼ばれる作曲家たち…家には彼らの曲のスコアがたくさんあって、休みの日があると、いつもそれを見ながら曲を聴いています。

ロシア音楽の何が富貴さんに響くのでしょうか?

富貴:もともと土臭い音楽が大好きなんです。ロシアの音楽は、地を這うように低音でメロディを動かしていて、太くて重たい。ロシアには複雑な歴史がありますが、だからこそ生まれた音楽だと思います。

音人工房 -OTOBITO KOBO-

富貴さんの使用機材

  • Mac Pro
  • MacBook Pro
  • Akai Professional MPK88
  • Steinberg UR824
  • Steinberg AI CONTROLLER
  • FOSTEX NF-1A
  • Tapco Mix 260FX
  • MOTU 896
  • YAMAHA MSP3

Present

こちらのアンケートにお答えいただいた方の中から抽選で3名様に富貴さんの直筆サイン入り色紙とCDをセットにしてプレゼントいたします。

※応募は締め切りました。たくさんのご応募ありがとうございました!

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