音人工房

JASRAC 日本音楽著作権協会

第5回 藤林 聖子

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Vol.3 ちょっと落ち込んだときにフッと入ってくる歌詞に引っかかってほしい

作詞家に求められる資質は何でしょうか?

藤林:どこからでも何かしらダメ出しをされる可能性があるので、ある程度メンタル面はタフじゃないと難しいかもしれないですね(笑)。あとは、相手がどういうものを本当に欲しがっているのかを理解して解釈する能力みたいなものですかね。でも、企画書だけだと分からないところもあるので、なるべく打ち合わせをしてくださいってお願いしています。

作詞家のデビュー当時から変わったことはありますか?

藤林:基本的には変わっていませんが、「役目」は分かるようになったかもしれないですね。どこに責任を持たないといけないのかってことですよね。歌詞を書くということはもちろん大切なんですけど、アーティストとの共同作業になるときは、その人が言っていることをちゃんと理解して、憑依したかのようにその気になって書いています。作詞を始めた頃は歌詞を目立たせようとするばかりに曲とのバランスがよくなかったり、私らしさが強すぎちゃってアーティストが歌えないこともあったと思います。やっぱり何を求められているかが分かるようになったのは大きいですね。

作詞家になってどれくらいの期間でその役目が分かるようになったんですか?

藤林:5年くらいはただ一生懸命に頑張ってますっていう感じだったんですけど(笑)。やっと冷静に見られるようになったのは、ここ最近ですかね。年齢的なものもたぶんあると思うんです。それと、今はいろいろなメディアやジャンルが増えてきて企画意図をきちんと説明していただくことが多くなり、打ち合わせ内容も明確になりました。

メディアが増えてきているのと同時に、音楽の流通形態も変化していますが、作詞家とはどうあるべきだと思いますか?

藤林:私自身その答えはまだ分からないんです。事務所の社長から阿久悠さんのお話をお聞きする機会があったときに、阿久さんは「歌詞は時代やその人に寄り添わないといけない」っておっしゃって新聞の切り抜きを毎日スクラップしていたそうです。私は女性なので、もうちょっと感覚的にはなってしまうんですけど、誰かがちょっと落ち込んだときにフッと入ってくるのが有線から流れてくる歌謡曲だったりすると思うので、そういうときに引っかかってもらいたいなという思いはあります。以前いただいたメールですごくうれしかったのが、日曜の朝に子どものテレビ番組をつけていたら、仮面ライダーの『Climax Jump』(※1)っていう曲の出だしの歌詞『叶えたい夢があるなら 信じなくちゃ願った日々を』を聴いて思わずお父さんが涙してしまったっていう内容だったんです。ご自身の仕事がうまくいってないときだったようで、そのメールをいただいたときはすごくうれしかったですね。聴くぞっていうときじゃなくて、フッと入ってくるような歌詞をたくさん作って誰かに引っかかってもらえたらうれしいですね。

誰かに引っかかってもらえるような詞は、相当な経験がないと表現できないように思うのですが。

藤林:人生経験がちゃんと伴わないと書けないことっておそらくあると思うんで、その時々で気づいたことや感じたことはストックしておいて、そのうち表現していきたいなと思います。今は若い方向けに書くことが多くて、あんまり老成してそのメッセージや方向性が違ったものになってしまうのもいけませんし。今も残っている曲って、歌詞も素晴らしいんだと思います。

後から聴いてもやっぱりいいなっていう曲はありますよね。

藤林:ありますね。尾崎紀世彦さんが歌った『また逢う日まで』(作詞:阿久悠)は短い歌詞の曲ですけど、しっかりドラマが描かれていて、世界観がすごいなって思いますね。やっぱり作詞は短い言葉で端的に深いことを表現するのが一番難しいと思うので、まだまだだなと思いますね。音の響きも含めて難しい言葉を使っちゃうこともあって、それでいいと思うこともあるんですけど、残っている曲を聞くと、もっとシンプルにそぎ落とさなければいけないのかなと思いますね。

訳詞も多数手掛けていらっしゃいますが、訳詞のときに気を付けていることはありますか?

藤林:もともとあるものなので原曲の詞の大意は壊さないことですね。それから、E-girlsさんの『THE NEVER ENDING STORY ~君に秘密を教えよう~』(※2)は1コーラスがすごく短いんですよ。英語のスピードに比べて、日本語はどうしても遅くなってしまうので、そこをどう工夫して解消していくかが大事ですね。意味を伝えるのにちょっと構成を変えたり、勢いがあって一発で分かってもらえるようなワードを探したります。やっぱり歌ってみてダメなときは、一回息抜きしないと出てこなかったりしますね。

各方面から依頼が殺到して言葉が枯渇することはないんですか?どのようにして言葉を思いつくんですか?

藤林:恋してる20代の友達や付き合って1ヵ月くらいの子にLINEで「恋してる様子を教えて」って聞きますね(笑)。「彼氏がまだ帰ってきてない部屋で待ってるとき何してるの?」「どんな気持ちなの?」って。歌詞を書くときにはそういうドキドキを自分が思い出すきっかけにしています。

これまでの活動を振り返ってターニングポイントはありましたか?

藤林:大きく2つあると思いますね。早い段階では「ONE PIECE」の『ウィーアー!』や「仮面ライダー」などの主題歌をテレビで放送していただいたことが1つと、もう1つがBOAさんに詞を書けたことですね。そこから、BIGBANGさんやKARAさんなど韓国アーティストの日本語詞をコンスタントにやらせていただいています。

今後書いてみたいアーティストはいらっしゃいますか?

藤林:アイドルグループの歌詞をいっぱい書いてみたいですね。プロデュースまでは行かずとも、ちょっとキャラ付けできるような歌詞を書いてみたいです。やっぱり彼女たちを見てると元気になりますし、その元気は歌詞にも表れてくると思いますしね。

藤林さんは1995年12月にJASRACに入会されていますが、何がきっかけだったんですか?

JASRACオリジナルキャラクター
「ジャスラ」のぬいぐるみと一緒に

藤林:JASRACっていう名前はそれ以前にも聞いたことがありました。私が事務所に入って最初にお仕事をさせていただくまでに半年くらいお試し期間があったんですね。その後の本契約のときに同時にJASRACへの入会を事務所の方が勧めてくれました。だから、事務所と契約することやJASRACと契約することがプロになるんだなっていう嬉しさが一番最初にありましたね。

今後の夢を聞かせてください。

藤林:日本中の誰もが知っている歌の作詞をすることですね。今はなかなかそういう曲が生まれづらくなっているのかなって気がしています。だから、逆にそういう曲が書けたら満足するのかなとも思います。歌詞はジャンルにとらわれず、どこにでもトライしていけるので、なんでもやってみたいです。

最後に、作詞家を目指す若い人たちにメッセージをお願いします。

藤林:若さ故にやってみて本当によかったなって私は思うので、なんでも臆せずトライして、ダメだったらダメで、はい次!でいいと思うんですよね。不況だからとか音楽業界がどうだからとか、そういう次元じゃなく、やってみたいと思えばなんでもやってみるのが一番いいと思います。

  1. ※1『Climax Jump』/AAA(2007年3月21日リリース)
    ANB系「仮面ライダー電王」主題歌
    『Life is SHOW TIME』/鬼龍院翔 from ゴールデンボンバー(2012年10月24日リリース)
    ANB系「仮面ライダーウィザード」主題歌
  2. ※2『THE NEVER ENDING STORY~君に秘密を教えよう~』/E-Girls(2013年2月20日リリース)

(2013年3月公開)

Information

  • NHK Eテレ「すイエんサー」新エンディングテーマ

『ピカッと!アハッと!体操』(2013年4月~)/すイエんサ―ガールズ

  • テレビ東京系「這いよれ!ニャル子さんW」

エンディングテーマ(2013年4月~)

  • TBS、MBS、CBS、BS-TBS系「デート アライブ」

エンディングテーマ(2013年4月~)『SAVE THE WORLD』/野水いおり

  • TBS、MBS、CBS、BS-TBS系「俺の青春ラブコメはまちがっている」

エンディングテーマ(2013年4月~)
『Hello Alone』/雪ノ下雪乃(CV.早見沙織)&由比ヶ浜結衣(CV.東山奈央)
5月22日(水)発売、マキシシングル

Present

こちらのアンケートにお答えいただいた方の中から抽選で7名様に藤林聖子さんのサイン入りCDやグッズをプレゼントいたします。

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