音人工房

JASRAC 日本音楽著作権協会

第5回 藤林 聖子

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  2. Vol.2
  3. Vol.3

Vol.2 コンサートでファンの方が一緒に自分の詞を歌ってくれるのがめちゃくちゃうれしい

作詞の方法はどのようにされてますか?

藤林:まずメロディーをある程度大まかに覚えます。ノートをパソコンの横に置いて、構成を書くんですね。Aメロ、Bメロ、Cメロがそれぞれ何行あって、ここにキメがあるとか自分なりのしるしを付けて。それで、Dメロがあるか確認して。そこから一行ずつ細かいメロディーを覚えながら、全体の構成を考えつつ書いていくという感じですね。

先にメロディーがあって詞を書くことが多いのでしょうか?

藤林:もちろん逆のときも稀にあります。そういうときは、サビ始まりなのか、Aメロ始まりなのかをまず確認して、それからだいたいこの秒数だと何行ぐらいになるかを過去の例などで探ったりしながら書いていきます。

メロディーを口ずさみながら作詞をするんですか?

藤林:基本的にはそうですね。全体の構成の後に作品のキーになるようなワードを「ここにはめよう」っていうのを決めて、まずそこに乗るワードを探して、そこから広げていく感じですね。

そのワードが作品のタイトルになるんですか?

藤林:それを前提で考えるようにしているので、なるべくタイトルは最初に決めるようにしています。ただ、時々書いている途中に曲と違うなって感じて変えるときもあります。

詞が先のほうがいいと思うことはありますか?

藤林:ジャンルによると思います。もちろん詞が先で、曲を後ではめてもらう方が、音乗りや言葉の聴こえ方などを調整していただけるので、より聴き取りやすくなるなという感じはします。

「ONE PIECE」の『ウィーアー!』(※)は詞が先なんですよね。

藤林:実はそうなんです。日本語のアクセントを壊さないように田中公平さんにメロディーを付けていただいたんです。その分すごく耳に入ってきやすくなっているなと感じますし、ありがたいです。

サビを頭にもってくるのは、田中公平さんと打ち合わせをして決めたんですか?

藤林:『ウィーアー!』は歌詞コンペがあったんですよ。そのコンペ自体はサビ頭でという指定はなかったので、自由に書きました。結局、私がAメロから書いていたものをサビ頭に変えていただいていると思います。

藤林さんの詞は本当に元気が出ますね。

藤林:ありがとうございます。やっぱりお子さんが見るものなので、少しでも楽しく、引っかかりがあるように、興味を持ってもらえるように、そういう風には常に考えています。

作詞にあたって気を付けていることは何ですか?

藤林:なるべく抽象的になりすぎないようにはしています。あるストーリーであるとか、こういうことを伝えたいんだっていう企画内容を明確に出すようにしていますね。マンガや特撮などは台本を先にいただいて、ピックアップしなければいけないような情報を自分で理解してから書くことが多いです。

インターネット上では、藤林さんは「予言者」だという書き込みもあるようです。

藤林:そう言っていただいているみたいですね。特撮ものだと1つのシリーズでずっと同じ主題歌が流れるんですけど、作詞する段階では第2話か3話までの台本があがっていればいいほうで。それを読んで、今後の展開を少し予想します(笑)。

作曲家の中には打ち合わせをしたり、台本を読んだりすることで、すぐに頭の中に曲が流れる方もいるようですが、藤林さんもすぐに詞が浮かぶことはありますか?

藤林:つい先日打ち合わせをした際、テレビ局のプロデューサーさんがあるワードをつぶやいたときに「すごくおもしろいな」と思ってひらめいたことはありますね。それから、アーティストに直接お会いしたときとか、お会いしなくてもこの人ってこういう感じだと素敵だなっていう人物像から詞が浮かんできたりしますね。

レコーディングに立ち会うときはあるんですか?

藤林:基本的には立ち会うようにしています。ただ制作スケジュールがタイトで、すぐ録っちゃいますっていうときは立ち会えないときもありますね。

レコーディング中に歌詞を変更することは?

藤林:あります。私が変えるというよりはキーの関係で「これでは歌いにくいのか」っていうことはあります。そのときは濁点を外したり、「きゃ」「きゅ」「きょ」とかそういう小さい音を外したり、その辺は現場で対応します。

1曲の作詞をするのにどれぐらいの時間がかかるものなんですか?

藤林:5時間から1日半っていう感じですね。ノッてパッとつかめると数時間で終わってしまうこともありますし、なかなかつかめないと1日半くらいかかりますね。

これだけ依頼がたくさんあると、行き詰まったりしないんですか?

藤林:同じジャンルのものばかりやっていると行き詰まっちゃうと思いますが、いろいろなジャンルに分かれているので、それが気分転換になっています。ポンっとアニメやお子さん向けの依頼が入ってくると、また違う脳みその使い方ができます。音が先にあることが多いので、曲調が明らかに違えば気分転換になります。

作詞家の醍醐味は何でしょうか?

藤林:作詞家の仕事ってレコーディング前に終わってしまったり、スタジオにも行かずに終わってしまうこともあります。だから、コンサートに呼んでいただいたときにファンの方が一緒に自分の詞を歌ってくれてたり、アンコールのときにお客さんが自分が書いた詞を歌ってそのアーティストを待ってくれていたときはめちゃくちゃうれしかったですね。生で見る機会というのはなかなかないので、すごく感動しました。

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「ヘッドフォン、ハーブティー、MacBook、iPadはすべて欠かせないものです。集中するためにヘッドフォンで音楽を聴きながらパソコンで作詞をします。ペンを使うのは打ち合わせのときの企画テーマをノートに書いたり、メロディーの構成やこれも使えるかなっていう代案を走り書きしたりするくらいです。作詞家になりたての頃はファックスを使っていたり、デモテープを受け取っていたんですが、今は全部メールでダウンロードします。物の受け渡しがなくなった分、関係者の方々とお会いするチャンスがなくなってしまってちょっと寂しいですね。やはり雰囲気はその場で掴んだりするものなので、お会いした方がいいですね、絶対!」

  1. 『ウィーアー!』/きただにひろし(1999年11月20日リリース)
    『ウィーゴー!』/きただにひろし(2011年11月16日リリース)
    「ONE PIECE」主題歌

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