2000.06.15

STEP2000FAQ

Q.なぜ電子透かしが必要なのか。

電子透かしは、大きく3つの視点から必要だと考えます。

1つ目は「不正コピーの防止、コピー実施の管理」、2つ目は「違法配信の監視」です。

現在、消費者は、音楽をパソコン等で簡単にデータファイルとして取り扱うことができますし、広範囲の相手に対し、そのデータファイルを容易に送信できます。例えば、CD内の音源をMP3ファイルにすれば、何世代ものデジタルコピーが可能ですし、そのコピーをインターネット内で流通させることも技術的には容易です。

これを防止するために、デジタルデータの中に、電子透かしとして、コピーをコントロールする信号を組み込みます。パソコンに組み込んだソフトウェアやオーディオ機器にこの信号を認識させれば、コピーを禁止すること、1回だけ可能にすること、無限にコピー可とすることなどを管理できます。

また、電子透かしデータは、そのデータを検索することで、違法配信の監視をすることもできます。なお、この場合、どの楽曲が違法配信するかを監視するために、著作権や音源が一意に認識できるIDコードが透かしデータとして適当とされています。

3つ目は、「効率的な著作権の利用管理の実現」です。

音源に、IDコードを透かしデータとして挿入すれば、それをモニターすることで、どの著作物が、いつ、何回使われたのか等を管理することができます。著作権の利用管理をシステム的に実現できるため、著作物の利用管理、徴収、分配を正確に、迅速に、効率的に実現できます。

Q.現在電子透かし技術はどのくらいあると見ているのか。そのうちどのくらいの企業の応募があると予測されるか。

様々な情報を総合すると、10弱の有力な電子透かし技術があると想定されます。そのうちの特にキーとなる企業は、電子透かし技術の普及促進という、プロジェクトの趣旨に賛同頂き、応募頂けることになると思います。

そして、それらの企業は、優れた電子透かし技術の普及が、音楽産業の発展に寄与するということを信じ、技術開発を進められていると思います。

Q.実験の内容・方法について、詳しく聞かせて欲しい。

実験は、大きく4つ実施しますが、中心となるものは、耐性に関する実験と、音質に関する実験です。

耐性とは、音楽に書き込まれた電子透かしが、音楽を利用する際に行う、色々な操作をやっても消えないということです。具体的には、マスタリングの際の操作や放送スタジオでの操作、ネット配信に関わる操作等が該当します。

また、音質に関する実験は、透かしが聞こえるかどうかのチェックを行います。これは、レコーディングエンジニア、マスタリングエンジニア、シンセサイザーマニピュレーター等の微妙な音の違いを聞き分けることが能力をお持ちの方に、その被験を御願いいたします。また、統計的有意性の高い結果となるよう、実験計画・手法には、様々な配慮がなされています。

    音源は何を使うのか

音源は、その音楽ジャンルだけではなく、音の様々な特性に配慮し、バラエティに富んだものを選定しています。スペックとしては、CDスペックで、44.1KHz/16bit/2chのものが中心となります。

    圧縮技術は何を使うのか

ストリーミングを含め、現在、事実上の標準となっているすべての圧縮フォーマットを、耐性実験の対象としています。

    IDコードは何を使うのか

ISWCを想定したものを、著作権管理情報として挿入してもらいます。ISWCとは、著作物を管理するための国際的な作品コードで、CISACCISCommon Information System)の枠組みの中で、その利用促進を図っています。

    コピープロテクションも兼ねあわせるのか

STEP2000では、電子透かしとして、コピーをコントロールする(コピーを禁止したり、1回認めたり、無限に認めたりする)情報と、著作権を管理するための情報、すなわち、IDコードを挿入することを求めています。

STEP2000では、1つの電子透かし技術で、両方の要件を満たすことを求めています。

    実験を実施する技術会社はどこか(野村総研に技術部門があるのか)

具体的な実験作業は、日本音響研究所との協同作業により、実施致します。

    JASRAC自身が実験を行うのか。

実験業務は、野村総合研究所に委託します。JASRACは、野村総合研究所により提出される実験データ、分析結果をもとに、能力の高い技術を認定します。

Q.実験および認定に立ち会うのはどのような人間なのか(他団体も入るのか)。音質評価は音楽家が立ち会うのか。または科学的に調べるのか。

音質に関する実験は、透かしが聞こえるかどうかのチェックを行います。これは、レコーディングエンジニア、マスタリングエンジニア、シンセサイザーマニピュレーター等の微妙な音の違いを聞き分けることが能力をお持ちの方に、その被験を御願いいたします。また、統計的有意性の高い結果となるよう、実験計画・手法には、様々な配慮がなされています。

Q.JASRACが認定するのか。「STEP2000」プロジェクト名で行うのか。

JASRACが能力の高い技術を認定し、STEP2000の認定証を、その技術を持つ企業にライセンスします。認定された技術は、JASRAC及びCISACBIEM等のSTEP2000の参加団体を通じて、利用が促進されます。

Q.プロジェクトはCISACの公式機関となるのか。ここで認定を受けた技術が世界の著作権管理団体の標準となると言えるのか。また、費用負担は、CISACBIEM、他団体も行っているのか。

CISACの公式機関になることは、現在のところ想定されていません。

電子透かしは、著作権管理団体が挿入するものではなく、デジタル音楽流通に関わる事業者、特に、流通の最上流である音源に関わる事業者が挿入することが適切だと考えます。したがって、STEP2000で選定した透かし技術は、これらの事業者に推奨し、利用を働きかけることを行うことになります。STEP2000は、これらの事業者が電子透かしを導入するに際しての有力な情報提供の場となることを企図しています。

費用は、すべてJASRACで負担しています。しかし、CISACBIEM、他団体には、プロジェクト推進に際しての様々な便宜を図ってもらっていますし、認定結果が出た後の利用促進には重要な役割を果たして頂く予定です。

Q.SDMIが先に認定しているアリス(ベランス)社の高いハードルで実験を行うのか(4C Entityでのテストとの比較)。

SDMISTEP2000は、プロジェクトの目的が異なるため、実験のハードルの高さは比較できませんし、そもそもSDMIの実験のハードル、すなわち評価認定の基準は、公表されていません。

SDMIは、SDMIの目的があり(具体的には「標準化」)、その目的に添うよう推進されていると想定されます。STEP2000は、透かし技術のできる限り早期の普及とその促進、そしてそのための選択肢の提供を目的としていますので、実験項目はその目的に添うよう選択されています。

Q.SDMIフェーズ2との関係または連携は。

現時点のアプローチは異なりますが、優れた技術が普及することを支援するという究極の目標は変わらないと思いますので、ある意味では相互補完的なプロジェクトとなる可能性は大いにあると考えています。

また、いずれも音楽産業の永続的な発展が、プロジェクト実施のそもそもの出発点であるということは疑いのないことだと思いますので、連携が現実化することも、近い将来十分考えられると思います。

ただ、現在のところ、具体的な連携のためのアクションは起こしておりません。勿論、連携が極めて有意義であることは言うまでもないことだと思います。

Q.認定された透かし技術を施さなければJASRACとして許諾しない方針はあるのか。

STEP2000の認定技術を導入することと、JASRACの利用許諾は、現時点ではセットではありませんが、技術普及等、様々な環境が整えば、「電子透かし」の挿入を許諾の具体的な条件にしていきたいと考えています。

Q.認定企業の技術内容を明らかにするのか。

STEP2000終了後、公表するものは、プロジェクトの実施概要(但し、特定企業の情報、もしくは特定企業が類推される情報を含まないもの)以外には、STEP2000の認定企業名のみです。実験結果データは、当該企業へのフィードバックは行いますが、一般には公表しません。

なお、STEP2000では、不合格企業名は公開しません。したがって、参加企業名も非公表となります。

Q.携帯電話を使った音楽配信にも用いることができるのか。

現在の電子透かし技術は、現在の携帯電話での利用をあまり想定していないため、改良を必要としますが、利用は可能だと思います。一般に電子透かしは情報量が少なくなるほど、耐性や音質に影響が大きくなりますが、求める要件も変わってくるため、対応できると考えられます。勿論、STEP2000で想定しているような実験項目で携帯電話の電子透かしの能力をテストするのは適切ではありません。

但し、これも現在の携帯電話の話であって、IMT2000以後を想定すると、携帯電話は軽いデータ、低品質を扱うという状況は崩れるため、将来的には他の配信と同様と考えるべきだと思います。

Q.ライセンス料にもハードルを設けるのか。

技術を保有する企業が、利用に際していくらでライセンスするかは、テスト項目にはしていません。ライセンス料とは、技術の永続的な発展のためには、市場で決めていくべきものだと考えていますし、こういう場の評価項目としてはそぐわないと認識しています。

Q.評価基準となる項目を具体的に明記するのか。

評価基準は、テストをどういう目的で実施したかを反映するもので、様々なスタンスがあり、その設定はいろいろな次元の可能性を持つため、認定基準は、非公表にする予定です。

但し、STEP2000は、できる限り早期の透かし技術の普及・促進を企図しているため、そうしたポリシーに沿った基準になるのではと想定されます。

以上


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