著作権審議会第一小委員会が報告書

 WIPO新条約批准のための法整備など、国際的調和の推進も視野に入れて著作権法の改正を検討してきた著作権審議会(会長・北川善太郎名城大学教授)の第一小委員会およびマルチメディア小委員会ワーキング・グループは12月10日、計5項目にわたる審議結果を報告、このうちJASRACが即時撤廃を求めている附則14条について、第一小委員会は「早急に廃止することが必要」との判断を示しました。
 第一小委員会は、附則14条を早急に廃止すべき理由として・同条により管理対象外とされてきた施設が、レコードの再生演奏から有線音楽放送の利用に転換してきており、廃止による直接的な社会的影響が減少している・現行法制定後30年が経過し、廃止に関しては一定の条件整備を前提としながらも利用者団体等の理解を得られつつある・公衆への伝達のうち、今回の検討結果で必要と判断している上映権の拡大(下記・参照)が認められた場合、適法録音物の再生演奏についてのみ権利を留保する経過措置は、権利保護の均衡を著しく失する、などを挙げており、権利者団体等に対し、実際の権利処理のルール、スケジュールを早期に利用者団体等に示し、十分な協議を行うなど、演奏権管理の円滑な実施に向け、十分配慮する必要があるとしています。 このほかの審議項目は、いずれもデジタル・ネットワーク化などに対する著作者保護の国際的な枠組みとして、平成8年12月に採択されたWIPO新条約に加入するために必要な法改正であり、第一小委は・一般的頒布権の新設  ・上映権の拡大の必要性を報告、またワーキング・グループは・コピープロテクション等技術的保護手段の回避装置の規制等・電子的権利管理情報の改変等の規制についてまとめています。 ・では、映画の著作物にしか認められていない頒布権を、著作物一般に認めることが必要であるとし、・では公衆送信を伴わずに有線または無線(ポイント・ツー・ポイント送信)を利用してスクリーンなどに映し出すなど、経済価値の高まってきた新たな利用方法に対応できるよう、上映権を著作物一般に拡大する必要があるとしています。
 ・・は、権利の実効性を確保するための規制で、無断複製防止等のために施されたコピープロテクションの解除、また電子透かし技術などを用いて著作物等に埋め込まれた権利管理情報(著作権者名や利用の条件など)の不正な除去・改変などを、権利者の民事的救済措置または刑事罰の対象とする必要があることをまとめています。
 これらの報告書を受け、文化庁では著作権法改正の法案をまとめ、1月19日開催の通常国会に提出する予定です。


スイスでCISAC執行委員会、理事会

 12月7日、著作権協会国際連合CISACの執行委員会がスイスの著作権協会SUISAの主催によりチュ−リヒで開かれ、小野理事長がオブザ−バ−として出席、翌8日の理事会には理事長と服部克久理事が出席しました。
 執行委員会、理事会とも、CIS計画(作品や権利者等の資料の国際的な標準化、ネットワ−ク化)の実行状況が報告され、1999年のCISAC予算が承認されました。また理事会では、開発途上国の管理団体に助成しているCISAC連帯基金について、イギリスの演奏権管理団体PRS、アングロアメリカの協会から各地域の優先順位を決めるなど、適切に管理すべきとの意見が出され、連帯基金の配分を決めるための「貸付け審査委員会」設置が承認されました。
 JASRACの理事長の交代は今回の理事会に報告され、小野理事長の執行委員への指名が承認されました。また、インタラクティブ配信に適用する使用料について、JASRACがネットワ−ク音楽著作権連絡協議会NMRCと暫定合意したことを報告しました。 次回の執行委員会は、6月にマドリッド、理事会は11月に執行委員会とあわせ東京で開かれることになっており、小野理事長が、東京での会議に合わせJASRAC60周年記念祝賀会、シンポジウムを開くことを報告、各協会に協力を要請し、承認されました。


JASRAC文化事業コンサート「普段着の室内楽」開催

 JASRAC会員からの会費を主な財源に、公益的文化事業の一環として実施する2回目の文化事業コンサート「普段着の室内楽 木管アンサンブルの調べ」が11月28日、けやきホールで開催されました。
 小・中学生を対象とした昨年7月の「夏休み音楽会」とは趣向を変え、今回は広く一般に親しまれている映画音楽や歌謡曲を木管合奏用に編曲し、身近な作品の新たな側面を楽しんでもらおうと「子象の行進」「ピンクパンサー」「東京ラプソディー」「悲しい酒」「小交響曲 変ロ長調」(グノ−)「四季より」(チャイコフスキ−)などの作品が、松戸市を中心に活動しているフルスヴァルト合奏団によって演奏されました。
 当日は演奏に先立ち、小野理事長が挨拶、“音楽のこころ見えますか”のキャッチフレ−ズにもあるように、創作者・演奏家たちがそれぞれの作品に込めた想いを、今回の演奏会を通じて感じとっていただきたいと述べました。
 「東京ラプソディー」「悲しい酒」などの演奏には、会場から賛辞が寄せられ、終演後、来場者から今後もこのような催しを随時企画してほしいとの要望が多く出されました。
 次回は著作権思想普及事業として、1月25日に永田町・キャピトル東急ホテルで「変革期を迎えた音楽産業と著作権」をテ−マとするシンポジウムを開催、文化庁の吉田大輔著作権課長による基調講演とパネルディスカッションを行うほか、3月20日、けやきホールに星野哲郎氏を迎えて「昭和の歌謡史と歌謡詩(仮題)」と題した講演会・歌謡ショ−を開催する予定です。


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