附則14条廃止など著作権法改正の要望書を提出

7月27日、JASRACは著作権者の正当な権利確保と、国際的な不平等、不均衡を是正するため、著作権法附則14条(適法録音物による再生演奏について、特定の利用形態によるものを除き、自由利用を認める経過措置)の廃止、および放送・有線放送される著作物の伝達にかかる同法38条3項の権利制限規定の一部削除などを求める著作権法改正の要望書を、林田文化庁長官に提出しました。
 要望書に添付された報告書では、附則14条の廃止が急務である理由として、極めて例外的な権利制限の規定として設けられながら、4半世紀が経過していること、欧米諸国はもとより、近隣の中国や韓国などでも見られない規定で、相互管理上、不平等・不均衡を呈していること、また、制定当初に懸念された同条廃止が及ぼす社会的影響が、有線音楽放送の普及などにより軽減されたと考えられることなどを挙げ、著作権者の正当な権利の確保と管理の公平性を実現するため、営利を目的とする演奏は、その利用方法の如何を問わず管理の対象にすべきとしています。
 附則14条とのバランスを考慮して、権利行使を留保してきた公衆送信伝達(著作権法23条2項)については、附則14条廃止を待って管理を開始する方針であることを示し、業務用受信装置を用いる有線伝達のみを管理することは利用者に不公平感を与えることから、制限規定38条3項にある「通常の家庭用受信装置を用いてする場合も、同様とする」の部分を削除、受信装置の相違により制限されることのないよう求めています。
 また同条廃止後の再生演奏・公衆送信伝達の管理対象は膨大な件数にのぼることから、利用者の利便、管理の公平性・効率性をはかるため、元栓での権利処理方法を検討、関係事業者に理解を求めていくこととし、音楽の提供先で権利侵害が発生する場合に、提供者側にも侵害の責任が及ぶ「二次(間接)侵害規定」の創設も要望しています。
 このほか報告書では、具体的な管理施策、使用料規定案などの検討結果がまとめられています。
 

    

著作権法百年記念会が発足

 来年わが国の著作権法が施行100年を迎えることから、7月27日、「著作権法百年記念会」の設立総会および「著作権法100年記念事業推進本部」第1回会議が、東京・虎ノ門パストラルで開かれました。
 40を超える著作権関係団体の代表らが発起人となって設立された「著作権法百年記念会」は、逐次改善されてきた著作権法の軌跡等を振り返り、将来の著作権制度の在り方を展望、また著作権制度に関する社会的関心や国民の理解の増進を図ることができるよう、@記念祝賀会の開催A記念基金の設立Bその他必要な記念事業の開催を目的としています。
 @は、来年7月22日、文部省、文化庁の主催により天皇皇后両陛下ご臨席の下開催される「著作権法百年記念式典」にあわせ、文部大臣、文化庁長官など広く著作権関係者を招いて行う祝賀会です。Aは著作権に関する調査研究や著作権の啓蒙事業に助成する基金、Bは著作権フェスティバルなどの文化庁協賛事業で、これらを実施するための財源として今年9月から来年8月まで、趣旨に賛同する個人、企業・団体などから1億円の寄付を募ることとしています。
 会長には元文化庁長官で作家の三浦朱門氏、7名の副会長のうちの1人にJASRACの遠藤会長が就任、また加戸理事長、木村常務理事のほか、作家・出版社団体の会長が理事として加わっています。事務局は著作権情報センターCRIC内に置かれることとなりました。
 また、文部大臣を本部長とし、文化庁長官など政府関係者や著作権関係団体の代表者などで組織される「著作権法100年記念事業推進本部」は、@天皇皇后両陛下の臨席を賜る記念式典A記念講演会B100年史の編纂・発行など、記念事業全体を総括し、文化庁などが主催する事業と関係団体との協賛事業の具体的な内容を検討します。
 今後JASRACは、両組織の主要メンバーとして記念事業に積極的に参加していきます。

 JASRAC主催初の文化事業

  けやきホールで「夏休み音楽会」開催

 7月21日、けやきホールにおいて、新定款実施後、会員からの会費を主な財源に実施する初の公益的文化事業「夏休み音楽会−ゲーム・アニメーション音楽」がJASRACの主催で行われました。
 主に小・中学生を対象としたこのコンサートは、日本作編曲家協会JCAA、スタジオ・ミュージシャンズ・クラブSMC、日本シンセサイザー・プログラマー協会JSPAの協力を得て、人気のゲーム・アニメ音楽などが、SMCオーケストラによりJCAAの萩田光雄さんの指揮で演奏されました。
 演奏に先立ち、主催者代表として加戸理事長が「今日は皆さんに音楽の素晴らしさを生で味わっていただき、音楽を大切にしようという気持ちを持ち帰っていただきたい」と挨拶、第1部では、「ドラゴンクエストVI」「スーパーマリオ64」「ファイナルファンタジーVII」などが弦楽・木管アンサンブルにより演奏されました。
 第2部では、SMCの篠崎正嗣さんがエレキバイオリンと二胡を、JSPAの大浜和史さんがシンセサイザーを使って楽しいトークを交えながら演奏、またSMCの槙みちるさんが宮崎駿アニメより「さんぽ」「君をのせて」などを歌いました。
 コンサート冒頭では、すぎやまこういち理事からのメッセージが披露され、音楽著作権・隣接権についてのやさしい解説も行われました。
 当日会場は夏休みを迎えたばかりのたくさんの親子連れで賑わい、人気アニメ音楽の主題歌が演奏されると、子どもたちから大きな歓声があがるなど、舞台と一体となった楽しいステージが繰り広げられ、アンコールでは全員で「となりのトトロ」を合唱、初の文化事業コンサートは大盛況となりました。

新定款での任意的入退会制度による会員、信託者数まとまる

 定款の一部変更にともなう任意的入退会制度の導入により、著作者・音楽出版者などは、JASRACの運営に寄与する「会員」の立場または著作権の管理のみを委託する「信託者」の立場のどちらかを任意に選ぶことができるようになりましたが、8月1日現在の会員・信託者数が下表のようにまとまりました。
 この集計には、これまで会員だった著作者・音楽出版者などに対し、会員資格を継続するか信託者になるかの意向を「確認書」の送付・回収などにより確認した結果と、4月以降の新規入会者・信託契約締結者が含まれています。

会員・信託者(1998年8月1日現在)
正会員 準会員 信託契約のみ 合計
作詞者 324 2,029 608 2,961
作曲者 310 1,346 389 2,045
作詞・作曲者 627 1,700 485 2,812
(著作者合計) 1,261 5,075 1,482 7,818
継承者 0 711 365 1,076
音楽出版者 244 963 416 1,623
権利者 0 34 7 41
特別正会員 0 0 0 7
合計 1,512 6,783 2,270 *10,565
*581名の承継未定者をのぞく。

カラオケ5坪まで店の契約件数現況

 今年2月から使用料徴収を開始した「カラオケ5坪まで(宴会場10坪まで)店」の7月末現在の許諾件数がまとまりました。全国の合計は8万1,469件、適法利用率は43.6%です。
社交場の管理業務を行っている全国22支部のうち、7支部で適法利用率が50%を超えており、最も良い鹿児島支部では59.1%となっています。
 JASRACでは現在、業務協定を結んだ全国カラオケ事業者協会JKA(毛塚昇之助会長)の協力を得ながら全ての無許諾店をリストアップし、悪質なリース事業者に対する法的措置も視野に入れながら、適法利用率向上のため、さらに業務態勢を強化することとしています。

横浜支部の本案訴訟 全面勝訴

 JASRACは川崎市内の社交場事業者を相手取り、平成九年五月、著作権侵害差止と損害賠償を求める本案訴訟を横浜地方裁判所川崎支部に提起していましたが、7月16日、JASRACの主張を全面的に認める判決が下されました。
 被告の経営する店舗は開店以来、無断で管理著作物のピアノ演奏などを続けていたため、平成8年11月、JASRACは著作権侵害差止等の仮処分を申し立てましたが、相手方は「著作権の消滅しているクラシック曲のみの演奏であり、客の傾向によって管理著作物を使用した時期もあったが、仮処分申立以降は管理著作物は使用していない」などと主張、裁判官も一部主張を認めたため、決定主文は@ピアノによる管理著作物の使用禁止Aピアノの執行官保管B管理著作物以外のピアノ演奏を執行官は許すことができる、との内容となり、損害賠償については本案訴訟で争うこととなりました。
 しかし、決定後の実態調査でも管理著作物の演奏が確認されたことなどから、裁判所でも、被告の営業に管理著作物の演奏は不可欠であり、現在の営業形態も開店当初から変化していると考えにくいなどと判断され、JASRACの主張が全面的に認められました。

兵庫県警と和田山署が海賊版販売者を逮捕

 JASRACが6月9日に告訴していた兵庫県加西市在住の男性が7月16日、著作権法違反の疑いで、兵庫県警生活経済課と和田山署に逮捕されました。
 この男性は、レンタル店で借りたCDからヒット曲を、権利者に無断でカセットテープに録音、販売した疑いがもたれています。
 この事件は、同容疑者から販売の委託を受けた主婦から、違法行為に当たるかとの問合わせを受けた和田山署が、JASRACにテープの鑑定を依頼、無許諾録音物であることが判明したため、3月27日容疑者および知人宅を捜索、今回の逮捕に至りました。
 その後の捜査でこの男性は、昨年4月から今年3月までの間、知人への販売委託やカラオケ店などへのチラシ配布、FAXを使った通信販売などで購入者を募り、計15府県の客に無断録音物を販売、約300万円の利益を上げていたことが判明しています。
 今年4月以降、JASRACの告訴した海賊版販売者が逮捕されたのは3回目です。

'97年度外国入金国別ベスト10

1997年4月1日から98年3月31日までに、外国団体からJASRACに入金された国別の使用料がまとまりました。
外国入金の総額は、6億3997万円(演奏=5億1061万円・録音=1億2936万円)。1997年度のJASRACの総徴収額に占める割合は、0.68%とわずかですが、前年度比では66%増と大幅な伸びをみせました。

表1のとおり、前年度に続いてイタリアが1位。前年2位の香港はフランスに次いで3位となりましたが、前年度と比べると64%増。フランスが前年度比2倍強の伸びとなったのは入金時期のずれによるのもので、95年度と比べるとほぼ同額。ドイツの7倍増も入金時期のずれによるものです。
今年度新たにベスト10入りした5位ブラジル、9位チェコについては、ブラジルUBCから過去2年半分の使用料が入金されたこと、またチェコOSAから日本のレコード会社がチェコで著作権処理したCDの使用料が入金されたことによるものです。前年度までベスト10入りしていたオランダは8位から12位、ベルギーは10位から13位に後退しました。上位10ヵ国の使用料合計は外国入金総額の88%を占めています。

上位3団体からの演奏権入金のうち、団体ごとに最も入金の多かった作品は表2のとおりです。その国での日本のアニメ作品の人気傾向がうかがえ、興味深い結果となりました。
 香港CASHについては、毎年歌謡曲、ポップスが上位に入っていましたが、今回はベスト10すべてをアニメ作品が独占しました。

表3は、アジア中東各国の団体からの入金額国別ベスト3。以下シンガポールCOMPASS、インドネシアKCIと続きます。

 参考までに、97年度に分配した外国入金使用料の作品別ベスト3(表4)を掲げた。

 イタリア、フランスなどからの入金については、アニメなどテレビ番組の放映による入金が全体の9割を占めており、これはキューシート(映画やテレビ番組などに使用された作品やその関係権利者、使用時間等を記載した資料)をもとに分配されます。上位50曲のうち、番組放映などによるものを除いた作品は、11位「上を向いて歩こう」(永六輔作詞、中村八大作曲)、21位「マリンバ・スピリチュアル」(三木稔作曲)、24位「HAPPY SAD」(小西康陽作詞・作曲)の3曲のみ。

<表1>1997年度 外国入金国別ベスト10    (単位:千円)
順位 国名 団体名 入金額 合計入金額 前年比 (%)
1@ イタリア SIAE 111,570 114,680 112
3,110
2A フランス SACEM 71,110 113,550 232
SDRM 42,440
3B 香港 CASH 74,240 81,730 164
7,490
4C スペイン SGAE 51,110 57,830 162
6,720
5D ブラジル UBC 53,660 53,660 -
6H ドイツ GEMA 39,770 49,530 708
9,760
7E イギリス PRS 11,550 30,080 94
MCPS 18,540
8D アメリカ ASCAP 22,380 29,900 86
BMI 2,740
HARRY FOX 4,770
9− チェコ OSA 130 20,170 -
20,040
10F オーストリア AKM 14,330 14,690 78
austro-mechana 360
※◯囲み数字は前年の順位、−は'96年度ベスト10外
は演奏権使用料
黄色
は録音権使用料

<表2>団体別入金トップ1(演奏権)

団体名 作品名 著作者
SIAE ルパン三世PARTIII BGM 大野雄二
SACEM CAT'S EYE BGM 大谷和夫
CASH スラムダンク BGM B・M・F

<表3>アジア中東各国からの入金    (単位:千円)

順位 国名 団体名 入金額 前年比(%)
香港 CASH 81,730 164
イスラエル ACUM 6,830 785
マレーシア MACP 2,840 347

<表4>外国入金分配額ベスト3

順位 作品名 著作者
美少女戦士セーラームーン BGM 有澤孝紀
巨獣特捜ジャスピオン BGM 渡辺宙明
CAT'S EYE BGM 大谷和夫


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