音人工房

JASRAC 日本音楽著作権協会

第1回 GIORGIO CANCEMI ジョルジョ・カンチェーミ

  1. Vol.1
  2. Vol.2
  3. Vol.3

Vol.2 一切悩まない曲作り

ずっとHIP HOPをされていたというイメージが強かったんですが、実際作られた楽曲を聴いてみるとPOPなテイストだったりR&B的なテイストが混ざっていたりしますよね。

G:そうなんですよね。意識して作っているわけじゃないんですけど、僕が作るラインは「歌謡曲ライン」ってよく言われていて。意外とみんなが歌えるような曲を作るんですよ。自分の曲をたくさんの人に聴いてもらいたくて、それがどっかの時代に小学生が発表会のときにみんなで歌うような曲になったらすごく嬉しいし。大して意識はしてないですけど、歌って結構大事なんですよね。ただラップでメッセージを伝えるだけじゃなくて、僕は元々歌とラップの絡みが好きなんで、メロディーラインは大事にしてます。でも、アレンジはHIP HOPであったりR&Bだったりして。そこの融合が自分の“味”なんだろうなって思ってます。

創作活動を始められたきっかけは、ラップからですか?それとも歌からですか?

G:ラップです。最初は、ただラップが好きで、ラップの歌詞書いて、インストにそういう歌詞を乗っけてやってました。今みたいに誰でも音楽を作れると思ってなくて、敷居が高い、低いの問題じゃなくて、自分が音楽を作ること自体考えてなかったんですよ。そういう時期にm-floのTakuが先輩でいたんですけど、彼が自分で曲作ってるって聞いて、ちょっとトラックをもらったりとかしてて。でも、インストだと「本当だったらもっとこうしたいんだけど」ってことができないじゃないですか。もうできちゃってるものなんで。それで自分でやれば自分が望んでいるようにできるだろうなって思って作り出したんですよ。

それはいつ頃ですか?

G:高校ぐらいですね。

曲の作り方って今と昔で変わってますか?

G:違います。特にここ2年ぐらいは、また更に変わって。今まではラップグループに提供する曲に歌を入れてたんで、トラックから作ってたんですよ。でも、最近はまずメロディーとコード進行を同時に作って、そこからアレンジを詰めたりとか、ラップを入れたりとか。昔のやり方と順番が逆になった感じです。

それは何かきっかけが?

ジョルジョさんのプライベートスタジオの作業スペース

G:先にトラックを作っちゃうと、既にできているトラックにメロディーを乗っけるんで、メロディーの動き方が無限じゃない。それを逆にした途端「あら簡単。メロディーが無限になった」って(笑)。普通の人には当たり前のことなんでしょうけど、僕の場合はずっとそういう概念がなかったんで。ただ、そうするとメロディーをどこにでも動かせちゃうんで、僕は「ラララ」とかシンセサイザーのメロディーは一切使わないんです。シンセは僕の中でトラックをチープにする一番の原因だと思ってまして。僕自身はシンセで聴くと楽曲のアレンジの一環だと思っちゃって、「なんでこんなチープなものを…」ってなっちゃうんで、それは避けて。で、「ラララ」で歌うと、それこそメロディーがどこにでもいけちゃうし。メロディーと言葉って一緒になって初めて人の心や頭に届くものだと思っていて。なので、歌詞とメロディーはある程度一緒に書くようにしてます。ただ、最初に作った歌詞は別に後で変えてもいいと思うんですよね。ガラっと全部変えてもいいと思うんですよ。なんでもいいんで、ある程度テーマに添った歌詞を書いてみて、曲にするっていうのが僕のデモ作りですね。

曲ができる段階で、なんとなく歌詞も浮かんでくると。

G:浮かびますね。1日に5曲、6曲は普通に作るんですけど、一切悩まないですね。曲作りはすごい早いと思います。メロディーも悩まない、コードも悩まない、アレンジも歌詞も何も悩まない。悩んだらその場でその曲を作るのは止めるんですよ。よく聞く「曲が降りてきた!」とか、そんなのはないんです。降りてきてくれないんで(笑)。ただ悩まずに、いろいろ考えていくと、こうきたらこうしたい、こうなったからこのメロディーをこうしたいとか、自分の中で楽しみながら作るっていう作業のやり方なんで。それである程度たたき台を作った後で、ここの歌詞をこうしたほうがいいんじゃないかなとか、メロディーをこうしたほうがもっといいかなって、細かい作業をやっていきます。

創作活動を行ううえでのこだわりを教えて下さい。

G:一個一個の楽曲はもちろんこだわってます。でも、できた曲をどこに届けるかってことのほうが僕はこだわっていて。だから、最後の最後で、もしその楽曲をティーンエイジャーに聴いてもらいたいと思ったら、ターゲットに合わせて本当にどんどんこだわっていくっていう。自分がティーンエイジャーの頃に戻って、「当時何を求めてたかな」とか、「どういう音楽を聴きたいと思ったかな」とか、「どういうCDを買ってドキっとしたかな」とか、いろいろと考えさせられます。

曲を作るときに「新しいことにチャレンジしていこう」というようなことは意識されていますか?

G:僕は新しいことをやろうと思ったことはないし、実験的なことをやろうとも思ってないですね。リスナーの立場になって考えたときに、例えばブラック・アイド・ピーズのCDを買うときは、やっぱりブラック・アイド・ピーズらしいサウンドを求めるんですよ。全然違うことやられちゃうと、たぶんこけちゃう。要は求められるのは新しいことじゃなくて、その人に何を求めているか。「松井にはホームラン、イチローには打率」みたいな。僕自身も「あれもできる、これもできる」じゃなくて、せっかく今いろいろと楽曲を聴いてもらえる環境が増えたんで、「自分の楽曲はこれですよ」っていうものをリスナーに提供していきたいですね。

音人アイテム -OTOBITO ITEM-

ジョルジョさんの創作活動に欠かせないアイテムをご紹介!

G:レコーディングで必ず使うんですけど、BlueのBottle(写真右)っていうマイクとNeumann(ノイマン)のU47(写真左)ってやつです。僕の中で昔から夢のマイクだったんですよ。アーティストとして歌うときに、マイクスタンドの前に立つじゃないですか。そのときにすごくやる気が出て、上手に歌えるんじゃないかって。なんかこのマイクで録ったらかっこよく録れるんじゃないかって。マインドコントロールみたいなものですけど、とにかくこれは僕の中では大事な、欠かせないアイテムです。

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