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2017年2月27日
一般社団法人 日本音楽著作権協会
(JASRAC)

楽器教室における演奏等の管理開始について

当協会は、去る2017年2月2日の記者懇談会において、いわゆる楽器教室における演奏等の管理を開始する旨正式に発表いたしました。
本件につきましては、主に管理対象となる大手楽器教室運営事業者に対し使用料規程案を示して意見を求めている最中でもあり、その詳細を皆さまに広くお知らせすることはしておりませんでした。しかし、一部報道やSNS等において事実と異なる情報も広がっている状況に鑑み、下記のとおりQ&A形式で概要をご説明いたします。
音楽をご利用になる皆さまからお支払いいただく著作物使用料が著作権者に還元されることは、新しい作品が創作され、音楽文化が発展するための源泉になります。今後とも、当協会の著作権管理業務にご理解とご協力を賜りますようよろしくお願いいたします。



(管理開始時期)
Q1.いつ楽器教室における演奏等の管理を開始する予定ですか?
A.楽器教室の運営事業者などの利用者で構成された団体(利用者団体)との協議を経て、2017年7月に使用料規程を文化庁長官に届け出たのち、2018年1月から管理を開始する予定です。

(経緯)
Q2.どうしてこのタイミングで管理を開始するのですか?
A.楽器教室における使用料徴収ついては、2003年から楽器メーカー等と協議を重ねてまいりました。この間、管理著作物の演奏利用について、以下のとおり利用者団体との協議などを経て管理を順次開始してまいりました。  
  ・2011年4月からフィットネスクラブ  
  ・2012年4月からカルチャーセンター  
  ・2015年4月から社交ダンス以外のダンス教授所 (社交ダンス教授所は1971年から)  
  ・2016年4月からカラオケ教室、ボーカルレッスンを含む歌謡教室
以上の経緯から明らかなように、同じ音楽教室でありながらカルチャーセンターで行う楽器教室や歌謡教室については使用料をお支払いいただいている一方、楽器教室のみがお支払いをいただけていないというのが現在の状況です。既に使用料のお支払いをいただいている各種教室の事業者との間の公平性を確保する観点からも、これ以上、楽器教室の使用料徴収の開始を遅らせることはできないと考えております。

(対象となる楽器教室)
Q3.楽器教室での演奏は教育目的なので、演奏権は及ばないのではないですか?
A.著作権法では以下の3つの要件を全て充たしている場合には、権利者の許諾を得ることなく演奏できると定めています。
  (1)営利を目的としていない
  (2)聴衆または観衆から、入場料ほか料金を徴収しない
  (3)出演者等に報酬が支払われない
したがいまして、上記の3要件を全て充たしている場合は演奏権は及びませんが、その1つでも該当しない場合は許諾を得ていただく必要があります。営利事業である音楽教室での音楽著作物の演奏利用には演奏権が及ぶこととなります。

(法的根拠)
Q4.楽器教室での演奏は公の演奏に当たらないので演奏権は及ばないのではないのですか?
A.楽器教室において音楽著作物を演奏する主体は、著作権法上の規律の観点から、当該楽器教室の経営者です。そして、楽器教室における音楽著作物の利用は不特定の顧客(受講者)に対するものですから、公の演奏にあたります。各種教室事業のうちダンス教室における音楽著作物の演奏利用は公衆(不特定かつ多数)に対するものとの判断が既に示されています(名古屋高判平16・3・4判時1870号123頁)。

Q5.どのような楽器教室が使用料徴収の対象となるのですか?
A.楽器メーカーや楽器店が運営する楽器教室が主な対象となります。

Q6.個人教室は対象となりますか?
A.事業規模が小さく継続性が低い個人教室は、当面、管理対象としません。

Q7.学校の授業における音楽の演奏利用も対象となりますか?
A.学校の授業での演奏利用は管理の対象ではありません。

Q8.クラシック楽曲を使っても対象となりますか?
A.クラシック楽曲などの著作権が切れた楽曲のみを演奏する場合は管理の対象となりません。

(使用料)
Q9.JASRACではどのような使用料規程を検討しているのですか?
A.使用料は、事業の規模に応じた内容となるよう検討しております。他の分野の使用料規程と同様、利用許諾の方法や使用料の種類について事業者に選択肢を用意することとします。具体的には、年間の包括的利用許諾契約を結ぶ場合の使用料として定率の年額使用料を定め、それによらない場合の使用料として定額の月額使用料と1曲1回の使用料を定めることを検討しております。その額は、事業者の使用料負担の公平性の観点から、受講者数と受講料に応じた使用料とします。

(教材の著作権処理について)
Q10.楽譜、CD、DVDなど楽器教室で利用する教材は、既に許諾手続を済ませているはずなので、別途、使用料の支払いは不要ではないのですか?
A.音楽著作物は、CDへの録音、放送、配信、演奏等のさまざまな利用方法があります。そこで、それらの利用方法に応じ、その都度それぞれの利用者から許諾手続をとっていただくことになります。例えば、すでに音楽著作物の「複製」利用の許諾手続を済ませている楽譜であっても、その楽譜に記載された音楽著作物を「演奏」利用する際は、別途「演奏」利用の許諾手続が必要になります。

(分配について)
Q11.楽器教室にお支払いいただいた使用料はどのように権利者に分配するのですか?
A.使用料をお支払いいただく楽器教室の運営事業者から利用曲目を報告していただくことにより、著作物使用料の分配の対象となる楽曲を特定した上で作品ごとの分配額を計算します。ここから著作権管理に要する実費に相当する管理手数料や源泉所得税を控除した上で権利者の皆様に分配します。

(著作権法の趣旨について)
Q12.楽器教室の管理開始は、音楽文化の発展に寄与するという著作権法の趣旨に沿っておらず、音楽文化を衰退させることにつながりませんか?
A.著作権法は、著作物の「公正な利用」と「著作権の保護」とのバランスを考慮し、権利が及ぶ範囲と権利を制限する範囲とを定めています。音楽著作物の「公正な利用」は、音楽文化の発展に寄与するものですが、同時に「著作権の保護」を図らなければ、文化の持続的な発展を実現することはできません。楽器教室という営利事業における音楽著作物の利用について、著作権法上認められている権利の保護を図ることが著作権法の趣旨に反することはありません。今回の楽器教室に限らず、音楽著作物をご利用される事業者からお支払いいただく著作物使用料は、著作権者に分配され、著作権者はそれを糧に、新たな音楽作品を生み出します。作品への対価が次の創作を支えていく循環を「創造のサイクル」と呼んでいます。著作権は、新たな文化を生み出すために欠かせない「創造のサイクル」を維持するために認められている権利なのです。楽器教室が、この「創造のサイクル」に加わっていただくことこそが、新たな作品の創造につながり、著作権法の趣旨である音楽文化の発展に寄与するものと考えております。

以 上