JASRACは、訪日中のCISAC(著作権協会国際連合)事務局長のガディ・オロン氏にインタビューを行い、CISACのウクライナ支援への取り組みについて伺いました。
ウクライナの創作者の現在
創作者も含めて、全てのウクライナの人々がまさに人道的な危機に直面しています。NGO-UACRR(ウクライナの著作権管理団体)のごく一部の職員が、ワルシャワのZAiKS(ウクライナ難民の受け入れに貢献している隣国ポーランドの著作権管理団体)の事務所を間借りして活動しています。会長、CEOを含む男性職員の多くは戦地で戦っています。会長の家が完全に破壊されてしまったという話も聞きました。信じ難いことが起きています。
6月17日に、ウクライナ創作者の使節団(ウクライナの創作者代表、NGO-UACRRの職員、ZAiKSの職員)がパリのCISAC本部を訪れました。彼らはCISACコミュニティーがウクライナ創作者の後ろ盾となって支援していることについて、深い感謝を伝えるとともに、いざという時に動いてくれたのは、我々外国の創作者コミュニティーだけだったと、他からは救いの手はなかったと打ち明けてくれました。今後も継続するであろう危機の中で、彼らにはCISACコミュニティーの支援が頼りなのです。
CISACの3つの支援
ロシアによる軍事侵攻が始まった時点で、残念ながらウクライナの著作権管理団体の活動が困難になり、ウクライナの創作者達がただちに収入を断たれることは明らかでしたから、CISACは、すぐにウクライナ創作者への支援活動を開始しました。
この場を借りて、早期に支援に動いてくれたJASRACに感謝の意を表します。
団体によって出来ること出来ないことがありますから、より多くの団体が速やかに参加できるよう、複数の支援策を打ち出しました。
まずはウクライナの創作者らを支援するための基金を設立しました。現在、JASRACを含めて50を超える団体から150万ユーロの寄付が集まっています。使い道を紹介させていただくと、まずウクライナの創作者に対する直接の支援金として一部を送金しました。また、少額をNGO-UACRRの運転資金に充て、この他、難民受け入れに貢献している近隣諸国の支援組織に寄付を行っています。
二つ目は「Songs for Ukraine」というキャンペーン活動です。ARTISJUS( ハンガリーの著作権管理団体)が先駆けとなり、ウクライナ楽曲の利用を促進することで、ウクライナ創作者への著作物使用料の分配を増やそう、という取り組みを行っています。例えばKOMCA(韓国の著作権管理団体)は、複数の配信事業者との間でウクライナの音楽をもっと多く使ってもらう合意をしています。
三つ目は創作者による支援声明への署名です。これも多くの団体の協力を得て、世界中の4,000人以上の創作者から署名が集まり、ウクライナの創作者や軍事侵攻の被害者との連帯を表明しました。支援声明はすべての署名と共に、数多くの国の文化大臣宛にお送りしました。
これらの支援策については、世界中からとても多くの反響があります。さまざまな形でウクライナの創作者を支援していることについて、私たちとしても大変誇りに思っています。
#Songs for Ukraine
支援基金は緊急対策として必要なものですが、長期的な視点に立つと著作物使用料の入金が増えることが、ウクライナの創作者にとって最も大切だと思います。
ですから、ウクライナから遠く離れた日本で、JASRACが「Songs for Ukraine」を広め、ウクライナの音楽文化を日本へ紹介しようとしていることはとても素晴らしいことです。このことは、NGO-UACRRの方々にも報告いたしますが、とても喜ばれると思います。必ずウクライナの方々の力になります。
(インタビュー実施日 : 2022年7月12日)