作家で聴く音楽 JASRAC会員作家インタビュー
久石譲 1/2
久石譲 1/2
profile
久石譲 1/2
1950年長野県生まれ。国立音楽大学在学中から現代音楽に興味を持ち、コンサート、演奏、プロデュースを数多く行う。1982年、ファーストアルバム「INFORMATION」を発表し、ソロアーティストとして活動を開始。以降、「Piano Stories」、「My Lost City」、 「地上の楽園」、「WORKS」、「Shoot The Violist」、「ENCORE」、「ETUDE〜a Wish to the Moon〜」、「Asian X.T.C.」など多数のソロアルバムを生み出す。
映画「風の谷のナウシカ」以 降、宮崎駿監督の「となりのトトロ」、「もののけ姫」や、北野武監督の「HANA-BI」、「菊次郎の夏」など50本以上の映画音楽を担当し、これまで数度にわたる日本アカデミー賞音楽賞最優秀音楽賞をはじめ、第48回芸術選奨文部大臣新人賞(大衆芸能部門)、淀川長治賞など、数々の賞を受賞。また、サントリーCM「伊右衛門」の音楽で第45回ACC広告大賞の最優秀音楽賞を受賞するなど、CM音楽の分野でも活躍している。
1998年に開催された「長野パラリンピック冬季競技大会」式典・文化イベントでは、プロデューサーとして総合演出を担当。2001年には「Quartet カルテット」で自らも映画監督としてデビュー。音楽・脚本(共同)をも手がけ、高い評価を受けたほか、同年に福島県で開催された「うつくしま未来博」でもメインイベントの総合演出を手がけ、日本初のフルデジタルムービー「4MOVEMENT」を監督第2作目として発表するなど、多方面にわたりその才能を発揮している。
2004年には、“新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ”の初代音楽監督に就任。現在までに4回の全国コンサートツアーを敢行している。また近年は、韓国映画「トンマッコルへようこそ」での音楽監督、香港映画「A Chinese Tall Story」での音楽監督、中国映画「叔母さんのポストモダン生活」、「The Sun Also Rises」の音楽を担当するなど、アジアでの活躍も多彩。
最近では、公開中の映画「マリと子犬の物語」、宮崎駿監督作品「崖の上のポニョ」(2008年夏公開予定)、キム・ジョンハク監督による韓国ドラマ「太王四神記」の音楽制作を手がけるなど、その活躍はとどまるところを知らない。
「千と千尋の神隠しBGM」で2003年JASRAC賞金賞、「ハウルの動く城BGM」で2007年JASRAC賞金賞を受賞。
1980年3月からJASRACメンバー。

久石譲オフィシャルウェブサイト
http://joehisaishi.com/
● アンケートにお答えいただいた方の中から抽選で5名様に、2006年にリリースされた久石さんのソロアルバム「Asian X.T.C.」をプレゼントいたします。
※応募は締切りました。
たくさんのご応募ありがとうございました。
GOLDEN☆BEST
UPCI-1051 \3,059(税込)
ユニバーサル ミュージックから
発売中
● 久石さんの最新のお仕事
・シングル「崖の上のポニョ」
GOLDEN☆BEST
YCCW-30013 \1,000(税込)
ヤマハミュージックコミュニケーションズから発売中
宮崎駿監督が、同名映画のイメージアルバムを依頼する際に、久石さんに渡したメモが元になった作品。メモを元にイメージを膨らませた久石さんが作曲し、映画で作画監督を努める近藤勝也さんが作詞を担当、補作詞という形で宮崎監督が仕上げました。主題歌を歌うのは異色のユニット“藤岡藤巻と大橋のぞみ”。映画は2008年夏、公開予定です。
・「マリと子犬の物語」オリジナル・
サウンドトラック
GOLDEN☆BEST
MUCD-1175 \3,000(税込)
ドリーミュージックから発売中
“新潟県中越地震”の被害を受けた山古志村での実話を元にした、観る人すべてに生きる元気を贈る、奇跡と感動の物語です。久石さんはこの映画の音楽を担当、壮大なスケールの情感豊かな音楽が作品を彩ります。
・「太王四神記」オリジナル・
サウンドトラックVol.1
GOLDEN☆BEST
AVCF-26629 \3,059(税込)
エイベックス・トラックスから発売中
NHK BS-hiにて放映の「太王四神記」日本版のサウンドトラック第1弾です。来年1月25日にはVol.2も発売されます。

僕の音楽は、宮崎駿さんや北野武さんの映画に使われていることもあり、世界中で流れていますし、たくさんの国から作曲のオファーが来ます。仕事をするうえで、日本を背負っているという意識はありませんが、日本人であることの誇りは持っていますね。ただ、音楽家にとって重要なのは国籍ではなく、“どういう曲をどういうレベルで書けているか”ということ。ですから、日本の映画音楽を1本手がけるとしても、そこで書く音楽、たとえば弦の書き方は、それ自体は絶対にジョン・ウィリアムスには負けたくない、負けちゃいけないという志を持っています。クラシックの作曲家のスコアを見てもわかるとおり、弦の書き方ひとつとっても、精度を極めた緻密な書き方が世の中にたくさんあるわけです。自分はそれと比べ、どのくらいのレベルに達しているか。そういうことはすごく考えますね。そして、考え抜いていった先の個性という段階で、自分が日本で生まれ育ったという、この環境で育まれた良さがきっとあるだろうと考えます。ですから、自分が日本人であるとかアジア人であるというのは非常に深い部分で出てくるべきことであって、安易にアジアのエスニック楽器を使ってしまうとか、そういうようなレベルでの仕事のし方は良くないと思っています。
 とはいえ、近年はアジアでの仕事も増え、以前よりも自分がアジア人であることを意識するようになりました。日本人は、長い間欧米を見習いながらやってきましたから、殊に音楽の面では、アジアは遠い存在になっているところがある。けれども、自分たちがアジア人であることは間違いないわけですから、そこでのアイデンティティのあり方というのは大いに考える必要があると思っています。

曲づくりを楽しむようになったことが転機に

著作権法は国によって微妙な違いがありますよね。日本で上映されることを前提に制作した映画音楽が外国で使われた場合、どちらの国の著作権の考え方を適用するかなどでは、僕は外国とも結構闘ってきたつもりです。宮崎駿さんの映画以前には、邦画が海外で本格的に上映されることはほとんどありませんでしたから、そうした権利主張をしたのは、おそらく僕が最初だったのではないかと思います。そうした経験から言えば、もうちょっと世界で統一されたルールがあればいいな、とは思います。ただ、日本の法律の考え方を曲げてまで、中途半端に外国に媚びを売る必要はない。「日本はこうやって作家を保護している」というやり方があるなら、それをきちんと主張していくべきだと思いますね。
 アジアの国々の「著作権の意識の低さ」もよく指摘されるところです。でも、ついこの前まで日本も同じようなものでしたから、偉そうなことは言えないと思いますね(笑)。著作権というのは、オリンピックを開催する頃から意識が高まってくるんです。オリンピックを成功させるためには、スポーツだけではなく、知的な部分も含めたコミュニケーションを世界的に図れる体制をつくらなければいけませんから。韓国が著作権について意識しだしたのはソウルオリンピックの頃だと思いますし、日本だって、新しい著作権法が施行されたのは東京オリンピックの後でしょう。来年は北京ですから、中国に関しては少しずつ良くなっていくのではないでしょうか。
 北京などでは、僕のCDは数年前に発売されたばかり。ところが、去年コンサートを開いたところ、チケットは即日完売で、ものすごい人なんです。しかも、全員僕の曲を知っているんですよ。発売されていないものまでインターネットで聴いている。だったら、「聴くな」という統制をするのではなく、きちんと流通させたうえで著作権を保護した方がよほどいい。人々の「聴きたい」という気持ちに歯止めをかける理由はどこにもないですよね。

曲づくりを楽しむようになったことが転機に

一般の方は、作曲家というのはルーティンワークからは一番縁遠い職業のひとつだと思っているでしょうが、僕などはむしろ、サラリーマンの方より規則正しい生活をしているかもしれません。サラリーマンの方とは6時間くらいずれていますが(笑)、それはもう判で押したような生活ですね。朝起きてシャワーを浴びて、食事をとる。13時くらいから曲づくりを開始して、夜中まで。帰ってきて、ちょっとお酒を飲んで寝る。こんな日常の中で、ルーティンワークのように延々と同じことを繰り返していると、やっぱり苦しくなって、逃げたくなるときはありますよ。それでも音楽を続けるのは、僕にとって音楽は、生きることそのものだから。今までずっと、僕は音楽を通して世の中を見て、音楽を通して生きるということを考えてきました。そして、これからもそうするでしょう。「音楽」というのは、イコール「生きること」なんです。僕にとってはね。




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