8月に公開された「日本のいちばん長い日」のエピソードを教えてください。
富貴:この映画は8月15日の終戦の日がテーマで、大きなテーマ曲を二つつくりました。監督からは、「淡々としながらも、未来へ向かう眼差しがある音楽がほしい」という要望を受けました。
一つは、天皇を長とした「家族」としての日本が、時代に翻弄されて向かう先を、大きく包むようなメインテーマ曲。もう一つが、「負けてしまって終わり」ではなく、「負けたことによって始まる」ということを表現した『敗北を抱きしめて-Embracing Defeat-』という曲です。今回の作品で、私なりに終戦後の日本のレクイエムを書いたつもりです。安らかに眠るというより、「負けたことによって未来がある」という、大きい意味でのレクイエムを書きました。
一般の方の声は気になりますか?
富貴:はい、ファンの皆さんの声は大切にしています。メールやお手紙を頂いたり、ツイッターもやっていますので、色々な意見やアドバイスをたくさん頂きます。みなさんはとても鋭いので、「そうか、こういう風に思っているんだ」とか、「じゃあ今度こうしてみようかな」とか、自分のなかで解釈して取り入れています。「マッサン」をやった時は、ファンの方が似顔絵をたくさん書いて送ってくれて(笑)、家に飾っています。ありがたいですよね。
旅行好きな富貴さんですが、最近ロサンゼルスに行かれたそうですね。印象的だったことは?
富貴:ディズニーランドに、ジェリー・ゴールドスミスという作曲家が音楽を手がけた「ソリアンオーバーカリフォルニア」というアトラクションがあるんです。その音楽を聴きたくて、乗りに行ってきました。空を飛ぶようなアトラクションなんですけど、6回も乗りました(笑)。
実際に聴かれてどうでしたか?
富貴:ジェリーらしい壮大な曲で、とても良かったです。ジェリーの、決して派手ではなく細々とやっていく所が、何となく自分に似ているような気がしているんです。アシスタントを使わず一人でつくる所や、自分でオーケストレーションまで書くという所もそうですね。とても好きな作曲家です。
今後、やってみたい仕事はありますか?
富貴:映画音楽やドラマ音楽は、細々とでも一生続けたいと思っています。最近、「百日紅-Miss HOKUSAI-」という作品で初めてアニメーションの音楽を手がけたのですが、今後アニメーション作品にもたくさん携われたら嬉しいですね。
普段、著作権に関して意識することはありますか?
富貴:そうですね。1曲1曲を大変な思いで書いていて、作品は自分の子供だという気持ちがあります。著作権が大切に扱われることは、自分の子供を大切にしてもらうことだと思っています。それは、作家にとって最も大事なものですね。
作品をつくるうえで、一番大事なことは何ですか?
富貴:諦めないことです。ギリギリまで何かできるんじゃないかと常に考えています。スタジオで、どんなに時間がなくても最後の1分まで書けると思っていて。常にそういうスタンスでいます。
作曲家としての醍醐味は何ですか?
富貴:スクリーンなど大きな画面で観て、音楽が映像にぴったり合った時は、自分でもドキっとします。やっぱり完成したものを初めて観る時が醍醐味ですね。それから、自分が一生懸命書いた音楽をたくさんの人に聴いてもらって、お手紙やメールで「励まされました」というようなコメントを頂くと、「作曲家をやっていてよかったな」と思いますね。
これから作曲家を目指す若い世代へ、先輩としてアドバイスはありますか?
富貴:好きな音楽を、諦めず「これでいいんだ」と思えるまでつくり込んでみると、次のステップが見えてきます。最初は難しいと思いますが、まず一つの曲をつくり込んでみると、とても勉強になると思います。
(2015年9月公開)
- 「日本のいちばん長い日」オリジナル・サウンドトラック<Album>
- 2015年8月5日発売
- 「百日紅-Miss HOKUSAI-」オリジナル・サウンドトラック<Album>
- 2015年6月24日発売
- 「駆込み女と駆出し男」オリジナル・サウンドトラック<配信>
- 2015年5月13日発売
- 連続テレビ小説「マッサン」オリジナル・サウンドトラック2―北海道・余市編―<Album>
- 2015年2月18日発売
- 連続テレビ小説「マッサン」オリジナル・サウンドトラック<Album>
- 2014年12月10日発売
- 「夜のせんせい」オリジナル・サウンドトラック<Album>
- 2014年3月5日発売
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