音人工房

JASRAC 日本音楽著作権協会

第9回 羽岡 佳 Kei Haneoka

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Vol.2 自分のサウンドではなく、作曲を依頼してくれた方の要望に応えたい

普段、作曲はどのように行なっていますか?

羽岡:基本的に最初から打ち込みでやりますね。頭で考えたり譜面に書いたりしていた時期もあったんですが、今は完全に最初からコンピューターで作曲します。

メロディはどこから湧いてくるんですか?

羽岡:20~30分散歩をしてから席につくと、すごく集中できて、アドリブのような感じで、曲をバーっとつくれるようになるんです。散歩しないとそれが始まらないので、必ず散歩をしていますね。

散歩中は、何かを考えているんですか?

羽岡:考えは作曲の邪魔になると思っていて、知識や経験みたいなものも消したいんです。歩くと、頭の中の邪念が消えて、体調も良くなるし心も元気になるので、インスピレーションみたいなものが湧いてくるんです。

1日にどれくらいのボリュームをつくられているんですか?

羽岡:1日1曲は必ず目安にしています。もちろん、1曲に何日もかかる時もありますし、5~6曲短い楽曲をつくることはありますけど、1日1曲を目安にしています。

作曲活動をするなかで、ご自身のこだわりはありますか?

羽岡:好きだとか嫌いだとか、この仕事は簡単だとか大変だとか、「こだわらないこと」が逆にこだわりですね。あとは資料をもらったら必ず目を通します。まずそこに浸ってからつくり上げることを心がけています。

制作サイドとのイメージのすり合せは密にされるんですか?

羽岡:自分がつくりたいものをつくっても仕方がないと思っているので、最初に打ち合せをしてからつくるようにしています。打ち合せの話を一言一句メモしておいて、今回の正解は何になるのかなと探します。僕はどんな仕事でも、完成品に近いデモをつくって聴いていただくということを必ずやっています。「必ずデモをつくります」というのは、仕事をもらう上で自分の強みになることが多いと思っています。

ご自身のテイストというよりも、依頼とのマッチングを重視されているんですね。

羽岡:そうですね。意識としては、完全に発注していただいた側の心に寄せるという感じです。

「チーム・バチスタシリーズ」は、映画も含めかなりの作品数を手掛けていらっしゃいますが、そのなかで意識されていることはありますか?

羽岡:プロデューサーがこだわりや音楽的な知識を持っていて、今回のビジョンはこういう感じなんだと実際の楽器の名前を挙げてオーダーしてくださるので、なんとかそれを形にしようとしています。

毎回原作を読まれているんですか?

羽岡:そうですね、原作は大体読んでいますし、もちろん台本は必ず読んでいます。

このシリーズの作品を手掛けるなかで、難しかったことはありますか?

羽岡:「もっと強いテーマ曲を」と求められていたので、何度も何度もつくり直しました。時間はかかりましたが、しっかりと聴いていただいた上でリアクションをいただけるのはとても嬉しいことです。

「羽岡サウンド」というような、何かご自身のサウンドを特徴づけるものはありますか?

羽岡:あまり意識していないですね。むしろ、特徴を出したくないという意識があります。もっといろいろなサウンドにチャレンジしていきたいですね。やみくもにではないんですけど、その時必要なことに寄せて行きたいという気持ちのほうが大きいですね。

いわゆる「メロディがおりてくる」という事はあったりするのでしょうか?

羽岡:「おりてくる」というよりは「ネットワークからダウンロードしている」感じで、その時は感受性が全開モードになります。頭だけでつくった楽曲は、上手くできたとしても造花みたいで、生きていない感じがすごくしていたんですが、散歩をするようになってから、そうしたことが全くなくなりました。多分それがインスピレーションなんでしょうね。それがないと作曲にならないとすごく感じていますね。

使用機材のこだわりはありますか?

羽岡:今こだわっているのは、“効率”です。作曲の仕事がメインなので、音が良いに越したことはないんですけど、作業を妨げず効率が良くて、ソフトウェアが最新であることですね。自分の曲をどんどん時代に合わせてアップデートするのは大変なので、ソフトウェアの力で新しくしていけたらいいなと思っています。

機材のメンテナンスはどのくらいの頻度でされていますか?

羽岡:メンテナンスはせず、買い替えてしまいますね。機材がたくさんあるとケアが大変で、コンピューターに関してはさらにいろいろなアップデートやメンテナンスが必要なので、なるべく台数を増やしたくないと思っています。ビンテージは使わず、その時に気に入った最新のものだけを厳選しています。

機材や楽器を選ぶ際は、実際にお店へ足を運ぶんですか?

羽岡:今はほとんどインターネットですが、アドバイスをくれたりするので、決まった楽器屋さんも頼りにしています。

アドバイスをくれるお店をひとつ持っておくのが大切なんですね。

羽岡:そうですね。やっぱり楽器屋さんって、そういう所に価値があると思うんです。今はアマゾンとかで買う方が安いですけど、故障したときなどはお店の人が直接持って来てくれたりするのが一番ありがたいので、そういう楽器屋さんはひとつお付き合いしておいた方が良いと思いますね。

音人アイテム -OTOBITO ITEM-

羽岡さんの創作活動に欠かせないアイテムをご紹介!

AURORA AUDIOのマイクプリアンプ「GTP8」です。
打ち込みでつくった音は、このアナログのマイクプリアンプに一度通してからレコーディングエンジニアに渡します。
これに通すことで、音の魅力が増します。
自分の音をつくるための、ささやかなこだわりです。

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