まず神前さんが音楽を始められたきっかけを教えてください。

神前：保育園に通っていた頃にヤマハの音楽教室でピアノを弾き始めたのがきっかけですね。最初は音感教育のような感じで始めたんですけど。家には母が買ってくれたアップライトピアノがあって、それを弾いていました。小学校2、3年生の頃まで通ってたのかな。その後、小学5年生までピアノの先生にレッスンをしてもらっていたんですけど、割と「やらされていた」感じでしたね（笑）。

中学、高校時代は吹奏楽部でトランペットをされていたそうですね。

神前：トランペットを始めたのは「一番花形の楽器でかっこいいな」と思っていたからです。中高生のときも自宅にあるピアノは弾いていたんですが、特に力を入れていたわけではないです。バンドも組んでいなかったですし。

当時はどういう音楽が好きだったんですか？

大学は京都大学の工学部情報工学科に入学されているんですけど、この頃は音楽以外にやりたいことがあったんですか？

神前：人工知能とか、人間の感覚、認知科学の分野にすごく興味があって。人間の脳とコンピュータに関わることがおもしろそうだなと。

音楽では大学内のサークル「吉田音楽製作所」に入って活動をされていたということですが、具体的にはどのような活動を？

神前：基本はソロ、個人で音楽を作る。で、デモテープで発表するというサークルなんですけど。年に数回ライブがあるので、そのためにサークル内でユニットを結成したり、バンドを組んだりして活動してましたね。学校の授業には年に5日ぐらいしか出なかったです。1年生のときはまだ真面目に行ってたんですけど、2、3年からどんどんサークルのほうにハマっていって。授業に出なくなったあげく留年してしまい…。それぐらい音楽にハマってました。

楽曲制作は大学に入る前からされていたんですか？

神前：制作というほど形にはなっていないですけど、高校時代にピアノでポロポロ弾いていたのが、作曲のはしりみたいなものですかね。昔から与えられた練習本をやるのは苦手だったんですけど、歌謡曲とかを勝手に耳コピして弾くのが好きで。その延長線でアレンジをしたり、自由に弾くっていうことはよくやってました。

大学時代はきちんと作曲の勉強をしたんですか？

神前：誰かから学んでっていうことはなかったですけど、自分で本を読んだり、先輩のやり方を真似してみたりっていうのはやりましたね。ほとんど独学です。パソコンを使ったDTMはまだあまり普及してなくて。MIDIキーボードでシーケンサー内蔵のものがあったので、それで打ち込んでました。

大学卒業後はナムコにサウンドクリエイターとして入社をされていますが、学生からプロのクリエイターになって苦労した点はありましたか？

そういう知識を身に付けていってからは音作りにもいい影響が出てきたわけですね？

神前：そうですね。すごく音楽の幅が膨らんだと思います。もともと「○○風に作る」というのは得意だと思っていたんですけど、「仏作って魂入れず」みたいなものが多かったので、しっかりと土台を築いていった時期でしたね。ナムコに入ってお仕事をさせていただきながら、勉強もさせていただきました。

2005年にナムコを退社されてからは現在所属されているモナカに入社されて、「涼宮ハルヒ」シリーズや「らき☆すた」、「化物語」など、ヒット作のアニメ音楽を数多く手掛けていらっしゃいますが、もともとアニメ音楽をやりたい気持ちは強かったんですか？

神前：すごくやりたい気持ちはあったんですけど、「まさか本当にやれるとは」というのが正直なところです。まだナムコに在籍してるときに、アニメ製作会社の京都アニメーションさんの「MUNTO（ムント）」というOVA^※の楽曲制作をお手伝いさせてもらったことがあります。その後、テレビアニメでは「涼宮ハルヒの憂鬱」が初めてですね。

1. ※OVA…オリジナル・ビデオ・アニメーション。テレビや劇場での公開を目的としたものではなく、DVDやBlu-ray Discでの販売を主たる目的として制作されたアニメ。

ナムコ時代からの関わりがオファーに繋がったんですね。「涼宮ハルヒの憂鬱」は大ヒットしましたが、ご自身ではどう感じていましたか？

神前：本当に驚きました。アニメ音楽はわからないことだらけで、とりあえず「えいっ」って楽曲を提出したんですけど、おかげさまで大きな反響があったので。

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