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現在の補償制度の問題点

著作権法では、私的録音録画について補償金制度を定めています(私的録音録画補償金制度とは)。しかしながら、現在の補償金制度は、次の原因により機能不全に陥っています。

原因1.実際に使用されている機器・メディアが補償金の対象となっていない。

原因2.メーカーが支払義務者ではなく協力義務者とされ、制度が適切に機能する仕組みになっていない。

原因1.実際に使用されている機器・メディアが補償金の対象となっていない

時代遅れの対象機器・メディア

機器・メディアが補償金の対象となるには、国の政令により指定される必要があります。私的録音補償金については、1998年以降、追加指定されていません。政令で指定されている次の機器・メディアを、皆さんは現在、使っていますか?(補償金の対象となっている機器・メディア

また、補償金の対象とされていない機器・メディアの方が、対象とされている機器・メディアより多くの曲数が録音されているというデータもあります(機器・メディアごとの音楽データの保存曲数)。
このように政令で指定された機器・メディアと、実際に使用されている機器・メディアとが乖離してしまった結果、私的録音録画補償金の金額は、2001年度の約40億円をピークに急減し、2013年度は9千万円になっています。

なぜ実際に使用されている機器等が政令で追加指定されないのか

補償金の対象となる機器・メディアは、政令によって指定されます。
政令が決められるまでには、権利者を所管する文部科学省とメーカーを所管する経済産業省との間の合意が、事実上必要になります。
しかし、その調整が難しいため、なかなか新しい機器・メディアが追加指定されないのです。
法律ではなく政令で指定する制度としたのは、本来、時代の変化に即応して新たな機器・メディアを指定するためだったはずなのですが、実際には、そのように機能していません。

デジタル時代にデジタルが対象外?

テレビのアナログ放送を受信できないデジタル録画用機器は、現在の政令において指定機器とは言えない、との判決が言い渡されています(知財高裁平成23.12.22平成23(ネ)10008号)。
これは、アナログからデジタルに録画するときは補償金の対象となっても、デジタルからデジタルに録画するときは対象とならないということを意味します。デジタル録音・録画に対する補償金制度のはずなのに、デジタル全盛の時代に本来の機能を果たせていないと言えます。
実際、テレビ放送が地上デジタル放送となった現在、補償金の対象となるデジタル録画用機器等はほぼなくなっています。

原因2.メーカーが支払義務者ではなく協力義務者とされ、制度が適切に機能する仕組みになっていない

補償金の流れ

現在の制度では、私的録音録画補償金は次の流れで支払われています。

政令で補償金の対象と指定された録音・録画機器(特定機器)やメディア(特定記録媒体)の販売代金に補償金が上乗せされます。
購入の際にユーザーから支払われた補償金は、メーカーを通じて、文化庁長官が指定する指定管理団体に納入されます。

なお、法律上、補償金の“支払義務者”はユーザーです。メーカーは補償金を集め納入する“協力義務者”とされていますが、これは日本独自の制度で、海外ではメーカーに支払義務が課せられています。
また、指定管理団体には、私的録音補償金管理協会(sarah) が指定されています※3

現在の補償金制度の詳細は「私的録音録画補償金制度とは」をご覧ください。

※3 私的録画については、私的録画補償金管理協会(SARVH)が指定されていましたが、メーカーの協力が得られず、補償金が支払われなくなったことから、事業の実施が困難になり、2015年3月31日に解散に至りました。

協力義務者は協力しなくてもいい?

現在の補償金制度では、メーカーは補償金を集め納入する協力義務者とされています。
これは、私的録音・録画するたび権利者に支払いをすることは、ユーザーにとって難しく煩雑なことから、メーカーが一括して納入することになったものです。
しかし、メーカーは協力しなくても、何ら法律上の責任がないと裁判所が判断した例(東京地裁平成22.12.27 平成21年(ワ)40387号)もあり、これに従うと、メーカーの協力が得られず、制度は事実上機能しなくなってしまいます。

現在の補償金制度の抜本的見直しを!

現在の補償金制度は、私的録音録画の実態から乖離し、機能をほぼ停止しているため、権利者に正当な対価が還元されなくなっています。
ユーザー・メーカー・権利者の三者のバランスをとるために、合理的で実効性のある新たな制度を組み立てる必要があります。
内閣に設置された知的財産戦略本部による「知的財産推進計画2015 」にも、今後取り組むべき施策として、「クリエーターへ適切に対価が還元され、コンテンツの再生産につながるよう、私的録音録画補償金制度の見直しや当該制度に代わる新たな仕組みの導入について文化審議会において検討を進め、結論を得て、必要な措置を講ずる」(P42)ことが掲げられ、現在、文化審議会著作権分科会で話し合われています。

現在の補償金制度の問題点

<参考> 補償金の対象となっている機器・メディア

デジタル録音用機器 デジタル録音用記録媒体
DAT(デジタル・オーディオ・テープ)レコーダー DAT
DCC(デジタル・コンパクト・カセット)レコーダー DCC
MD(ミニ・ディスク)レコーダー MD
CD(コンパクト・ディスク)レコーダー CD-R、CD-RW
デジタル録画用機器 デジタル録画用記録媒体
Blu-Ray(ブルー・レイ)レコーダー Blu-Ray
DVD(デジタル・バーサタイル・ディスク)レコーダー DVD-R、DVD+R、
DVD-RW、DVD+RW、DVD-RAM
DVCR(デジタル・ビデオ・カセット・レコーダー) DVカセット
D-VHS(データ・ビデオ・ホーム・システム)レコーダー D-VHS

<参考> 機器・メディアごとの音楽データの保存曲数

項目 回答数 曲数
(平均保存曲数)
ポータブルオーディオプレイヤーの内蔵メモリー 1142 778.2
携帯電話・PHS の内蔵メモリー 195 96.6
スマートフォンの内蔵メモリー 943 309.2
タブレット端末の内蔵メモリー 182 334.5
IC レコーダー・リニアPCM レコーダーの内蔵メモリー 61 93.6
パソコンに内蔵のHDD・SSD 1759 1017.5
パソコンに外付けされているHDD・SSD 382 2258.2
自宅内のネットワーク(LAN)上にあるファイルサーバー・NAS 54 2398.7
フラッシュメモリー 394 296.9
カーオーディオ・カーナビ内のHDD・SSD 259 396.4
オンラインストレージサービス・音楽ロッカー・デジタルロッカーサービス 40 1168.3
その他の外部記憶メディア 11 1218.0
CD-R/RW(音楽用) 926 392.4
CD-R/RW(データ記録用) 326 540.4
DVD-R/+R/-RW/+RW/RAM(1 層、片面、約4.7GB) 119 839.7
DVD-RDL/+RDL/RAM(2 層、両面、約8.5GB) 26 619.0
BD-R/RE(1 層、約25GB) 30 397.2
BD-RDL/-REDL(2 層、約50GB) 10 532.3
BD-RXL(3 層、約100GB) 1 1.0
MD 129 446.0
その他のメディア 11 822.5

私的録音録画に関する実態調査 」(2014年3月)P102
(公社)著作権情報センター附属著作権研究所
調査実施機関:竃村総合研究所