福岡在住の松浦浩司によるソロユニット。福岡のみにとどまらず、各地の美容室・カフェ・ギャラリーなどで活躍中。ウクレレの弾き語りや、自作のバックトラックに乗せてのラップなどで人生のわびさびを歌い上げる奔放なスタイルで人気を集め、福岡のインディーズシーンには欠かせないアーティストとなっている。
とんちピクルスオフィシャルホームページ:
http://www.tonchipickles.com/index2.html
とんちピクルス。本名松浦浩司。刈り上げた頭に無精ヒゲ。一瞬怖い人かとも思うが、代名詞にもなっている犬のキャラクターの携帯ストラップを胸ポケットからのぞかせてインタビューに現れた彼は、にこやかでとても礼儀正しかった。
「犬のキャラクターですか?僕は以前、ポルノ映画館で映写技師を10年くらいやってたんです。映写技師って、フィルムをかけた後は結構ヒマなんですよ。新作のフィルムをつないだりするときは忙しいんですけど。それで、ヒマなときによくカレンダーの裏にこういう犬の落書きを書いてたんです。それが今こういう風になってるんです」
映画館は数年前に閉館、その後友人の紹介でカフェのランチのスタッフとして働いた。
「ただ、結局カフェはランチ営業を止めてしまったので、その時点でクビ。どうしようかなと思ったときに、レーベルの人が自主制作盤を聴いてくれて、『CD出してライブやって、音楽で生活できるように頑張ってみないか』って」
と、角砂糖を慎重にカフェオレに落としながら話す松浦。人生何があるかわからない。
ときにはウクレレ1本で切ない別れの歌を歌い、ときには打ち込みのトラックにあわせてラップをつぶやく松浦の姿は異彩を放ち、一度観たら忘れられない。彼の音楽的なバックグラウンドが気になるところだ。
「ひとことではなかなか難しいんですけど、僕はパンク・ニューウェーブ世代なんで、もとはその辺りになるんでしょうかね。今やってる音楽とは似ても似つかない感じなんですけど。その後クラブとかに行って、スカとかレゲエとか聴いて。小学生の頃には、自発的にではないですけどTVから流れるムード歌謡とかを聴いていましたね。フランク永井とか鶴岡雅義と東京ロマンチカとか好きですよ。曲もいいんですが、歌詞を見るとやっぱりすごいなって思いますね」


とんちピクルスのライブは、カフェや美容室でやることが多い。
なにしろウクレレとiPodがあればできてしまう。カフェでも美容室でも食堂でも海辺でもニューヨークでもライブができるフットワークの軽さだ。
「親しい友人の美容室で休業日にやらせてもらったのが最初ですね。その頃は別の名前で女の子とウクレレのデュオみたいなのをやってたんですけどね。それから何年後かに、とんちピクルスとして活動を始めた頃、お客さんにカフェをやってる人がいて『いっぺんうちのカフェで何かやってもらえませんか』って。そこから広がっていった感じですね。海外ではやったことないですけど、機会があれば韓国や台湾でも演奏できれば」
とんちピクルスの曲には、金屑川、中洲など地元・福岡の地名がよく出てくる。生活感や素朴さ、昨日楽器を買った人が、今日ステージに立ったような敷居の低さ。それらがとんちピクルスの世界を形作る。
「日々暮らしてる中での感情みたいなものを、これからも曲の中で出せたらいいなと思いますね。感情って、喜怒哀楽の4つだと言われるじゃないですか。でも本当の感情っていうのはその4つの感情の間にしかないと僕は思う。全部が“楽しい”とか“悲しい”っていうことはないですよね。いろんな感情がゴチャってあるのが普通の人間の暮らしじゃないかな、と思います。だからライブでも、下ネタでかなり際どい曲をやった次には、ホロッとするような曲をやったりとか、普通の人間の暮らしを歌っていきたい」
彼はこれから音楽で生活していく。目標は、たくさんの人と音楽でコミュニケーションを取ることだ。
「(音楽で生活するのは)すごく厳しいです(笑)。でも、去年今年といろいろな街に行ってライブをしたことで、『僕のことを全然知らない人とも音楽でコミュニケーションが取れるんだ』ということが今さらながらにわかったんですね。だから、きれいごとみたいですけど、行ったことのない街に行って、たくさんの人に自分の歌を聴いてもらいたいと思っています」
全国区になっても、福岡を拠点に活動したいという。福岡という土地に根ざした生活感を失ってほしくないアーティストだ。