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創立75周年記念事業
JASRACシンポジウム(2013年度)

「著作権集中管理団体に求められる役割とは」

デジタル技術の進展とインターネットの普及により、著作物の新しい流通ビジネスが次々に生まれ、著作物の利用主体も企業から個人に移行するようになりました。こうした利用形態の変化は、著作権の集中管理のあり方にも大きな影響を及ぼしています。
音楽の分野では、権利者と利用者が協議・協同して、適法に新しい音楽利用が展開できるよう、包括契約の利用、権利関係の透明化、全曲報告に向けたフィンガープリントなど新たな技術の活用、急増する利用曲目報告への対応などを進めてきました。
一方、著作権制度の面からは、国境を越える著作物の流通に関する国際間のルール作り、複数の管理事業者が併存するなかでの利用者の利便性の確保、孤児著作物の管理の可能性など、課題が山積しています。また、集中管理団体についても、コンテンツの流通促進の面から見たその存在意義や包括契約の是非などが議論されており、集中管理団体の対応が注視されているところです。
このシンポジウムでは、デジタル技術のさらなる進展が今後の著作権の集中管理のあり方や集中管理団体と利用者との関係にどのような影響を及ぼすのか、また、これからの集中管理団体に求められる役割とは何かを検証していきます。

当日の概要は次のとおりです。
※役職等は2014年3月24日シンポジウム実施時のものです。

第1部

「著作権集中管理団体の現状における役割」

北田暢也(JASRAC常任理事)

主催者であるJASRAC から、パネルディスカッションの前提となる知識について説明しました。

‹概要›
著作権管理事業を行うには、権利者・利用者双方との信頼関係が不可欠です。同時に、著作権管理団体には、高額な使用料を一方的に設定できないよう、様々な法律上の義務が課せられています。結果として、著作権管理団体は、権利者・利用者双方が折り合える使用料額を設定し、著作物の円滑な利用を図る役割を果たしています。
現在、著作権管理の仕組みの一つとして、管理作品全てを対象に一括して利用を許諾する“ 包括許諾”、及び利用作品数とは直接関係なく年額や月額の使用料を設定する “ 包括徴収(包括請求)” が行われています。この仕組みは、放送で音楽等を利用する場合、放送事業者・著作権管理事業者双方にとって合理的であり、効率性が高いため、世界各国で採用されています。

特別講演「諸外国における著作権の集中管理」

村上政博(成蹊大学法科大学院教授/一橋大学名誉教授/弁護士)

独占禁止法、競争法の専門家であり、文化庁委託調査「諸外国の著作権の集中管理と競争政策に関する調査研究」の座長を務めた村上氏が、同調査結果の概要などについて講演しました。

‹概要›
ドイツ、フランス、イギリスにおいては、集中管理団体に関する制度の枠組みがそれぞれ異なるものの、主な管理団体は単一であることを紹介したうえで、村上氏は、「日本の著作権法、競争法の法的枠組みは欧州に近く、参考にするならば欧州の動向であろう」としました。一方、三つの管理団体が存在するアメリカについては、複数団体があることにより、むしろ使用料総額は高額になっていると説明しました。
また、演奏や放送などの伝統的分野では、管理団体の複数化は経済合理性に反し、なかでも放送局への利用許諾は、欧米とも包括許諾・包括徴収が認められており、「日本だけがこれを禁止することはバランスを欠くのではないか」とまとめました。
このほか村上氏は、公正取引委員会によるJASRAC への排除措置命令についても触れ、JASRAC による包括許諾・包括徴収は「排除行為は充足するが、競争の実質的制限を充足しないため排除型私的独占に該当しない」との私見を述べたうえで、「しっかり審理を尽くして結論を得る方が、JASRACの今後の活動を保証するためにも、適切なルールを形成するためにも最善だと思う」と述べました。

第2部 パネルディスカッション
「著作権集中管理団体に求められる役割とは〜デジタル技術は集中管理団体を不要にするか〜」

■コーディネーター

安念潤司(弁護士/中央大学法科大学院教授)

■パネリスト

上野達弘(早稲田大学法学部教授)

上原伸一(国士舘大学大学院総合知的財産法学研究科客員教授)

福井健策(弁護士/日本大学芸術学部客員教授)

菅原瑞夫(JASRAC理事長)

‹概要›
ネットワーク上での利用はもとより、放送局などの利用においても、利用された著作物の把握がしやすくなったこと、また、ネットワーク上で膨大な数の著作物が利用されるようになったことなど、デジタル技術の発展に伴う現状や未来像を考察しながら、集中管理団体のあり方について活発な議論が行われました。
その中で、デジタル技術が発展しても集中管理団体や集中管理機能の必要性は変わらないという点については、パネリストの間で一致しました。
一方、現在、集中管理団体が活用している包括許諾・包括徴収(包括請求)について、上野達弘氏が「利用状況の把握が可能ならば、包括徴収することなく、利用状況をもとに使用料を算定する方法もあり得る」と問題を提起。放送事業者として長年JASRAC と使用料交渉をしてきた上原伸一氏は、公正取引委員会によるJASRAC への排除措置命令に関して、放送局の立場から、「複数団体がある場合の包括徴収は、利用された管理作品の割合と各団体ごとの使用料率を乗じて支払うようにすべき」としました。
また、膨大な数の著作物が流通するなかで、利用される機会が多く収益性が高い作品だけを管理する団体が現れる可能性について、福井健策氏は「売れない作品を管理する側の管理コストが上がり、これらの作品が利用しづらい状況になるのであれば、それは市場の失敗ではないか」と述べました。
このほか、集中管理団体の役割の可能性として、権利者不明のため利用許諾を得られない孤児著作物(オーファンワークス)の問題についても議論されました。

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